保健室に2人の教師が入ってくる。


「確か、お前は…」

「1年宇宙科の転校生、だよね?」


近づいてくる教師に、恐怖を覚えた。

前の学校ではこんなに簡単に人に会えただろうか。

会ったとしても、目を逸らされたり近寄ってこなかったのに。

やはりこの学校はおかしいよ。

放課後になってもなかなか帰らないし…




「……やめて、…話しかけないで…っ」

「!!!」



怖くなって、下を向いて小さく呟く。

何で人の心を読むことはできないのだろうか。

どうしてこんなにも私が拒んでいることに気づかないのだろうか。

私の心に気づいてくれる人は現れないのだろうか



「どうかしたのか?」


陽日…だったか、そんな感じの名前の教師が俯いた私を見て心配してきた。

それを見た星月は思い出したかのように話しかけてくる。



「…あー、気分はどうだ?」

「……………大丈夫、です」

「そうか。じゃ、授業行って来い」




そう言われて、静かに頷いた。

………もしかして、助けてくれた?

だとしたら、この人は良い人かもしれない。

この人なら…信じれるかもしれない。









*







今はもう2時限目くらいだろうか。

詰まった気分で教室のドアを開ける。

「〜で、あるから……」

何と言うことだ。まだ授業をしていたなんて…。

目立たないように自分の席に向かった。


「あ、紗夜帰って来た」

「良かったのだ〜」


木ノ瀬と天羽がそう言った。

私は何事もなかったように席に座る。





「不知火紗夜!」




ビクッと体が震えた。

何かと思ったら、教師が私の名前を大声で呼んだみたいだ。



「…………………何」

「お前、今までどこに行ってた?」

「…………気分が悪くなったから、保健室に」

「教師の許可無しにか?」

「…………そんな余裕なんてない」

「そうか?屋上で見かけた、って話を聞いたが…」

「…………その後に行った」




授業中に屋上で見かけた、って話を聞いたが」

「!!!」


「まずお前は何なんだ、その左目に巻いている包帯は」

「…………アンタには関係ない」

「その包帯、今すぐ外せ」

「無理」

「外せ」

「嫌だ。外さない」




「外せと言ってるのが分からないのか!!?」

「嫌だって言ってんだろうが!!!!」


「〜っもういい、俺が外す!」




そう言って教師は私のところまで来て、無理やり包帯を外そうとした。

私は必死に包帯を抑える。



「嫌だ…、痛い…!」

「外さないのがいけないんだ!」



包帯を取ろうとする教師に、拒む私。

クラスメイトはそれを見て止めようとする。

でも教師が、クラスメイトをどかして近づけないようにした。



「先生、止めましょうよ!」

「紗夜が痛がってるのだ!」

「うるさい、こいつが包帯を外せば良い話だ!」



髪を引っ張られて痛い。

でもこの包帯だけは絶対に外したくない。


思い出してしまうから

過去の出来事を。

もう変えることのできない現実を。

肯定されてしまった過去を。




そしてついに、包帯が緩んでしまう。

教師が緩んだ包帯を取る前に、包帯を外れないように目に当てる。

それでも教師は無理やり取ろうとする。


もう無理だ。でも取られたくない。

だけどこのままでは…。

嫌だ 嫌だ

助けて、助けてっ












「助けて一樹ぃ!!!」








無我夢中で叫んだ。

そんな私の声と共に、教室のドアが思いっきり開く。









「紗夜に触るな!!!」








助けてくれない、なんて…嘘。

呼んだらいつもすぐに来てくれる。



私のたった1人の、大切な人。