● ● ● 「ここが…星月学園……」 星月学園の昇降口前、1人の女の子が立っていた―――― そんな女の子に1人の男の子が話しかけてた。 「おぉ!やっと来たか、待ってたぞ」 ● 「……一樹」 男の子の名前は不知火一樹。 ● 星月学園3年の生徒会長だ。 ● そんな不知火を、女の子――紗夜は冷たい目線で見つめる。 「…何だよその目…」 ● 「それで、私はどこのクラスなの?」 ● 「あぁ、翼たちと同じ宇宙科だ」 不知火の言葉に紗夜は「ふ〜ん…」と呟いた。 「宇宙科、ね。…そもそも星自体に興味ないんだけど」 ● 「まぁそう言うなって。…あ、先生たちが紗夜のこと待ってるぞ」 不知火がそう言っても紗夜はどうでもいいような表情をしていた。 ● そして、何か思い出したかのように不知火に話しかけた。 「…約束、覚えてる?」 ● 「あぁ。『俺たちは他人の設定』だろ?」 紗夜の表情が少し和らぐ。 「絶対に話しかけてこないでよね」 ● 「何だ、いまさら反抗期か?」 ● 「…黙れシスコン」 そう言って紗夜は校舎へと向かっていった。 「…ったく、相変わらずな性格だな」 不知火は思わず苦笑する。 (紗夜は俺のこと拒んでるけど、話はしてくれる。目は合わせねーけどな…) ● (初対面の奴との態度に比べれば、まだマシ方なんだよな…) そんな彼の呟きは風に流され…消えていった。 * 「えー…転校生の不知火紗夜だ。女だが、仲良くしてやれよ」 ● 「………よろしく」 紗夜の紹介がされた。 ● 冷たい態度をとる紗夜を見て、クラスの男の子たちはひそひそと会話をする。 「…何か、女っぽくねーな」 ● 「確かに。マドンナの方が断然…」 ● 「何つーか…『女番長』だな」 ● 「「確かに」」 紗夜の表情が不機嫌になる。 ● 男の子たちの会話が聞こえたからだ。 ● そんな思いを打ち消して、紗夜は黙って席に着いた。 紗夜は静かに窓の外の空を見る。 ● 雲1つない、鮮やかな青… 空を見つめる紗夜の表情は―――――どこか切なく感じた。 時は過ぎ、放課後になった。 ● 宇宙科の教室の前に1人の男の子が立っている。 ● 不知火一樹だ。 ● 不知火は深呼吸して、教室のドアを思いっきり開けた。 「紗夜!どうだ、新しい学校生活は?」 3年の不知火の登場に、クラスの男の子たちは騒がしくなる。 ● 同じ生徒会の役員である天羽に用があるのかと思いきや、 ● 転校してきた紗夜の名前を呼んだからだ。 そして、騒がしくなる理由がもう1つ。 ● 不知火の声が聞こえるとともに、不知火の顔に筆箱が直撃したからだ。 「黙れカス」 紗夜の一言で、クラスはさらに混乱し始める。 「見たか?先輩に筆箱投げつけたぞ…」 ● 「アイツ、常識って言葉知ってんのか…?」 (だから聞こえてるってば!!) 怒った紗夜は自分の机を思いっきり叩き、教室から出て行った。 「…アレは相当怒ってるな……」 不知火はそう呟いた。 ● 彼の呟きを気にするほど、このクラスに余裕はないようだ。 …こんなんじゃない。 ● 私の生活はこんなんじゃない。 もっと1人で…ずっと1人でいるんだ。 ● 誰も何も言わない。 ● 話しかけてくるなんてありえない。 ● ただ…私を「裏切り者」という目で見てるだけ。 なのにこの学校はなぜ…? ● なぜ、私に構ってくるの…。 ● 1人にさせてよ、1人が好きなの。 ● 1人が好き。 ● 独りは嫌い。 私は…私はっ…! 私はこんな感じになりたかったわけじゃない――――――!!! そう思いながら、ただ只管に廊下を走る。 ● もう放課後だ…。いつもだったら、誰も居ない教室で、1人っきりで…… そう考えながら、廊下の曲がり角を曲がったときだった。 ドン! ● 誰かにぶつかった。 「いって〜〜!」 ● 「哉太、大丈夫?」 ● 「ちゃんと前見てないからだ」 ● 「哉太だからしょうがないよ」 ● 「何だと!?……てか俺、ぶつかったよな。誰だったんだ?」 ● 「そう言えば…。どこに行ったんだろう……?」 ただ、走った。 ● その場から逃げたかった。 ● 消えたかった。 止められなかった。 ● 止まらなかった。 見られたくなかった。 ● 私のことも、存在も。 ――――――――――泣き顔も |