長い夢だった、とクロノアは思う。
ファントマイル、ルーナティア。クロノアにとって現実ではないふたつの夢の世界を旅した今、夢見る黒き旅人である自分はどこへゆくのだろう。
「……ヒューポー」
今は遠い親友を想う。
ルーナティアは全く違う世界であるはずなのに、クロノアにとって始まりの場所であるファントマイルを思い起こさせた。
ヒューポーと駆けた太陽の神殿。ロロやポプカと逃げ回った怒りの国ボルグ。月の国と箱舟イシュラス。
そして、なによりも。
「ヒューポニア……」
ロロやポプカはフーポニア、と発音していたが、あの綴りは確かにヒューポニアだった。
哀しみの国と呼ばれたヒューポニアに君臨していた哀しみの王は、あまりにもクロノアとヒューポー双方に似すぎていた。
あの国で、何度ロロをヒューポーと呼びそうになったか。
「かえりたい、なぁ……」
自らの現実でも、ルーナティアでもなく。
大切なヒューポーがいる、ファントマイルへ。
「かえりたいよ、ヒューポー……異な夢なんて、言わないでよ……」
夢の中でひとり、涙を零しながらクロノアは呟く。
「いつも一緒だって、言ったじゃないか……!」
助けて、とクロノアは泣く。
ルーナティアで助けを求めていた哀しみの王のように。
つぶやく。ラクルドゥ、と。
呼び声がする。それは誰の泣き声か。
「ヒューポー、どうかしたのですか?」
「母上」
母である月の女王に訊ねられ、ヒューポーは首を振った。
「なんでもありません。ただ……」
悪夢の消えた、美しいファントマイルの空を見上げてヒューポーはただ、呟いた。
「クロノアが、ないていた気がして」
夢見る黒き旅人
孤独な旅人は何を想う
あとがき
初代クリア記念に。
2と明確に繋がってたら楽しかったのになぁ、とか思ったり。
瀬音
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