“大好き”
「好きよ」
「……んあ?」
「好きなの」
珍しく素直な想いを告げるルーシィ。
さっきからずっとその言葉を繰り返していた。
「おまえ…ルーシィか?」
「…っ!?……失礼ね!」
「急になんだよ?」
悪い気はしねえけど、
何度も言われるのは、流石のオレでも恥ずかしいだろ。
「…べつに、何でもないわ。――ただ言ってたいだけ…」
一瞬、怒ったように眉を吊り上げたが、さらりと交わすルーシィにナツは小さく溜め息をついた。
「ナツ?…溜め息なんて、どうしたのよ?」
「いあ。…べつに」
「今、溜め息ついたわよね?」
「ついたっけ?」
誤魔化してみたら、ルーシィは軽く俯いた。
表情は見えないが、金髪から覗く唇が震えていることに気づく。
「オレが言ってくれって言っても、普段のルーシィは言わねえのに…」
「……」
「おーい!ルーシィ?なんで黙るんだ?」
「――だって、ナツのことが大好きなんだもん!たまには自分から言いたい時だってあるわよ!」
「…っ!?」
コイツ変だ…いあ、いつも変だな。つーか、様子がおかしい?
「なんか・・・あったのか?」
「何で?」
「おまえらしく、ねえから…」
『オレはルーシィが好きだぞ!おまえは?』
言わせようとしても、照れてるのか…逆の言葉が返ってくることもあるのに。
「大好きだから言ってるのよ?」
「いんや、なんか変だ!」
「…変じゃないわ!ナツが好き。大好きなの!」
「――この前だっけか、隠し事はしねえって言ったの誰だっけ?」
「…か、隠し事なんてな――」
ルーシィの言葉を、ナツは遮った。
「言えよ、何だ?」
ルーシィは涙目になり、ナツはそんな彼女の背中に腕をまわした。
「本にね、書いてあったの。……好きな人と別れた理由の一つに、」
「うん」
「――…すれ違いって」
「うん」
「好きなのに、いつも強がって好きだって伝えられないと…後悔するって書いてあって」
「うん」
「だからね、あたしも伝えたい時に伝えないといけないんだって思ったのよ…」
たとえ敵だとしても、何でも相手の気持ちになって考えてしまうルーシィはナツと自分を、本に書かれてあったその人達と重ねて考えてしまったのだろう。
「好きなのに、大好きなのに――意地張って言葉にしなかったら伝わらないって。なんか切なくて、苦しかったから素直になろうって決めたの」
大きな瞳に涙をためて、ナツを見つめる。
「ねぇ、――ナツはあたしのこと…」
そういうルーシィの言葉を再び遮り、顔を寄せて――、
「んっ!!?……ナツ、もうっ!!!いきなりキスするなんて!」
「んなこと言ったって、ルーシィが悪ぃんだぞ…」
「なんでよ!?」
「…かわいいこと言うからだ!」
「かわいいとか言わないでー!!」
「思ったことを口にしないと、後悔するんだろ?オレはちゃんと伝えたいからなー」
「…そ、そうだけどっ」
『伝えたいことは思った時に』
ルーシィがナツに伝えたかった言葉。
「だからって…」
「オレは、ルーシィが好きだからキスしてえんだ!」
「ナツ…あたしのこと好き?」
「おう!だいすきだ!!」
「そんな大声で言わないでったらー!」
「大きくねえだろ?おまえこそ、声でけえぞ!」
「ちょ、なんですって!!」
ナツのイジワルな声に、ルーシィは声を張り上げるがその顔は笑っていた。
やっと笑顔が見れて、ナツは彼女の腕を掴み強く引き寄せて抱き締める。
ナツの温もりに安心したのか、微笑みながら彼の背中にそっと腕をまわすルーシィであった。
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