桜の花びらが舞う季節―――

友人と楽しそうに、笑顔を見せるあの人。

―――ナツ・ドラグニル。


「あの人?」
「うん、見つけちゃったの!笑顔がカワイイ男の子。3組のナツ・ドラグニルくんって言うのよ!」



2012年4月、ルーシィ・ハートフィリアは恋に落ちる。



「6番・32番・17番・35ば…、ツーショット!!」
「うそっ、どこ!?」
「………」

2012年5月、宿泊研修で撮った写真が廊下に貼り出されて、親友のユカと購入する写真の番号をメモっていた。


ちょっとでも映っているあの人を見つけると、迷わずその番号を手帳に記入していく。
ルーシィが『ツーショット』だと言った写真は、アイスを食べている彼がカメラ目線で映っているもの。
その背後に小さく木の陰から覗いているルーシィと、隣にはユカがいた。







2012年6月、誓いを立てる。



「あたし、決めたわ!『2013年のカウントダウンは』『ナツくんと一緒に迎える』」

頬を真っ赤に染めて、けれど真剣な瞳でユカに伝えた。
目の前ではちゅーっと紙パックのジュースを飲む彼女。





2012年8月、思い切って旅行のお土産をプレゼントしようと試みる。



「木彫りのキーホルダー?」
「その場で、彫ってくれるんだって!カワイイでしょ?…ふふ」
「…うん。でも、男にはどーかな」

楕円形のキーホルダーの真ん中に、龍がモチーフのそれをチェック柄の袋へ入れて、こっそりシューズロッカーに入れたのだが、うっかりして自分の名前を書き忘れてしまった。
普段は抜かりがないルーシィでも、こういう大事な時に限って失敗をしてしまう。
プレゼントは、差出人の名前がないままの状態で置かれている。
ルーシィは、自分からのプレゼントだという証明を泣き泣き諦めた。

「あーん、あたしのバカー!!」



2012年9月。


―――あ、ナツくんだ。


教室を出てルーシィはユカと廊下を歩いている時に、友人と一緒にこちらへ向かってくる彼とすれ違う瞬間、


―――え、こっち見てる?


「どうしたの、ルーシィ?」
「…あ、ううん。なんでもないわ」






この頃、なんとなく目が合うと思うのは、

気のせい?








2012年10月。


「来週、ナツくんの誕生日なんだ。絶対告白するっ!これ逃したら、もうチャンスないものね…」

もらって嬉しいアイテムが載っている雑誌を見ながら、
何故か暗い表情をしているユカに気づかず話し続けるルーシィ。

「ね、ねっ!プレゼント…何が良いと思う?」

「…ルーシィ、」
「ん?」

「私、昨日…ドラグニルくんに告られた――」



―――――へっ?



「ずっと、黙ってたけど…私も気になってたの、ドラグニルくんのこと。ルーシィと一緒に隠れて見たりしているうちに…」


―――ルーシィが、“かっこいー”って、言うから。「そうかな?」って見ているうちに。


「いつの間にか、好きになってた…。でも、先に好きになったのはルーシィだったから、言えなくて…。ずっと、言えなくて……、ゴメン」

「―――や、やだー、もーう!そんなおめでたいのに何泣いてるのよー!!」

俯いて涙を見せる彼女に、笑って応えるルーシィはバカねーと、バシバシ肩を叩いている。

「あたしも大袈裟に騒いでるほど、そんなに好きなわけじゃないし。ねっ、気にしないで!」
「でもっ…」
「ホントに、良かったじゃない!もー、悪いと思うなら駅前にできた洋菓子店のカステラパフェおごってよねー」
「いいの?…そんなので?」
「だって、あのパフェ食べたかったんだもん!…もー、ユカ〜笑ってよ。あたしは大丈夫だから、ねっ!」

大きな笑い声で、逆にユカを励ましているルーシィは無理しているようにも見える。



2012年10月、告白未遂のまま…見事失恋。








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