〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

誰も傷つかず、何も失わない。

涙を流すことも、血を流すこともない。

そこでは皆が笑顔で、希望に満ち溢れている。

そんな楽園のような世界を見せてあげると約束した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









「いい知らせと悪い知らせがある」

評議院をチームを組んでいる仲間と訪れたエルザが一人になったところで声をかけ、自分の執務室に案内したジークレインはそんなことを言った。

エルザはじろりとジークレインを睨み付ける。

「何だ?そのいい話と悪い話というのは・・・」
「エルザはどっちから聞きたい?いい話と悪い話と」
「どちらでもいい。もったいぶらないでさっさと言え」
「相変わらずおっかないな。まあ、まずはいい話からしておこうか。おまえのギルドの不始末、始末書50枚で勘弁してくれるそうだ」
「それのどこがいい話なんだ!」
「ギルドを解体されないだけましだろう。普通こんだけ問題起こせば、始末書で済まない場合もかなりある」
「う・・・それで悪い話とは」
「悪い話とは言えねえかもな・・・ジェラールにとってはだが」
「・・・っ!それじゃあ――」
「ああ。楽園の塔の完成がもうすぐだ」
「生贄は!生贄はどうするつもりだ!?まさか、仲間を――」
「いや、ジェラールにそのつもりはなさそうだ」
「本当か!?だが、昔奴らは塔で働かせている奴隷をそのまま生贄として捧げるつもりだったぞ」
「ははっ!だから、駄目だったんだよ。奴らは」
「どういうことだっ!」
「奴らはゼレフに心酔していながら、何も理解していなかった。生贄の意味とその重さを」
「生贄の意味?」
「おっと、しゃべりすぎたようだな。おまえの『今の』仲間たちが待ってるんじゃないか」
「待てっ!話はまだ終わってないぞ!」
「エルザ。ジェラールはおまえに楽園を見せると約束したな」
「な、なんでお前がそれを――」
「見せられるかもしれないな。ジェラールが昔思い描いた形じゃないかもしれんが」
「おいっ!どういう意味だ!?」

わけがわからなそうな表情のエルザを放ってジークレインは部屋を出る。
一拍遅れてエルザも追いかけてきた。

「おいっ!今のはどういう意味だ!」
「いずれわかるさ」
「おまえたちは一体何を――」
「あっ!エルザだ」
「急にいなくなってどうしたの?」
「ルーシィ・・・ハッピー」

妖精の尻尾の仲間に出くわしたエルザは仕方なく、それ以上の追及を断念する。

「ん?今、何かあの人と話してた?」
「あ、ああ。始末書を50枚書かないといけないそうだ」
「げっ・・・まじで」
「残念ながら、まじだ」

仲間の疑問をはぐらかすエルザを尻目に、ジークレインはその場を後にした。

奴らは本当に何もわかってなどいない。
奴らは塔を建設した後、その建設で酷使した奴隷をそのまま生贄として、ゼレフ復活の儀を行うつもりだった。

本当に愚かな奴らだ。そんな自分にとって思い入れのない、価値のないものを捧げてゼレフが喜ぶとでも思ったのか。

ゼレフを復活させるための生贄に相応しいのは、自分にとって最も大切なもの。価値のあるもの。それを捧げてこそ儀式を真剣に執り行うという何よりの証。

自分は何も失わず、傷つかず、すべてを手に入れようなどとは虫がいいにも程がある。

だから君を捧げよう。そして君に見せよう。幼い頃に約束した世界を。

君は楽園を生み出す装置の中で生き続ける――永遠に。俺の傍で。

そのとき会えるのを楽しみにしてるよ。エルザ。







END



☆★☆★☆
理乃さんより、いただきましたー!ジクエルのお話♪
んんん・・・良い意味で、ゾクッと鳥肌が立ちました。最後の『エルザ』に重みを感じますね。
シリアスなお話ですが、それが逆に刺激になって新鮮^^ジクエルは…ホント切ないですよね(>_<)
私の頭の中では、不敵な笑みを見せるジークレインと優しく微笑むジェラールが一緒に浮かんで、グルグルしてました(笑)

生贄って悪い言葉に聞こえますけど、それには深い意味がある。
上手く言葉にできませんが…エルザを想う、その想いだからこその彼の言動なんですよね!
読む方によっては、彼に対して引いてしまう部分もあるかと思いますが、冒頭の文があるので、そこをうまく汲み取ると変化していきます!

難しいですよねぇ…この二人を表現するには、心理描写って言うんでしたっけ?
私はまだまだ勉強不足です(>_<)
ジェラエルも苦戦するけれど、ジクエルはもっと頭を抱えてしまいますね。

新しい世界を作ろうとして奮闘していた彼の想いを考えると複雑な心境に陥ります。
でも、彼に共感することはできないから…モヤモヤ(-_-)

理乃さん…読ませていただき、ありがとうございました!




戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -