あたしの中、この頃ちょっと変わり始めてる――
「私ねー、ずっと聞いてみたかったんだけど…」
「なあに?」
「ルーちゃんって好きな人いないの?」
「へ…?」
部活動が始まった時間の最中、美術室と書かれてある室内から聞こえてくる女生徒の声が耳に届いた。
一人は、右サイドに青いリボンをしている金髪のルーシィ・ハートフィリア。そして、彼女の目の前に居る小柄の女子がレビィ・マグガーデン。
頬を赤く染めて困り顔のルーシィとは対象に、満面の笑顔を見せるレビィは彼女に近寄った。
「なっなっなんで、そんなこと…」
「だってさー、ルーちゃんそういう話する時、自分のこと話さないでしょ?気になってたんだよねー」
「あ、そうだ!あたし急用思い出した!」
「ルーちゃん!ズルーい」
側に置いてあった鞄を胸に抱えて教室を出ようとしたが、すぐに捕まってしまう。
ルーシィは顔を背けながら、口を開いた。
「べっ別にいないわよ!そんな人」
「ホントー?…ナツではという説もあるんだけどなー」
「ナ!?…ナツは、幼馴染だわよ!見ればわかるでしょー」
「ん…まぁ、確かに。ルーちゃんとじゃ色気ないもんねぇ」
レビィの口から幼馴染の名前が出たことに驚き、必死に答える。
しかし、ルーシィの返事に対してすぐ頷いた彼女に拍子抜けしたことで、体勢を崩したルーシィは後ろに立て掛けてある大きな絵にぶつかってしまった。
ガタリと傾く絵が倒れてくるが、それと共にパレットが頭の上から落ちてくる。
「きゃあああ」
「ルーちゃん!!?」
金髪から制服にかけて油絵の具が付いてしまった。
「ひえっ〜〜〜」
「ルーちゃん、大変!べったりだよ。落ちるかな…」
「……」
「もう、これだからルーちゃんはからかい甲斐があるというかあり過ぎるというか…」
レビィが戸棚から専用の容器を取り出し、布に含ませたそれをルーシィの制服に付けて擦ると汚れが薄くなっていく。
幸いにもお気入りのリボンには付かなかった。
――ああ…もう。うっかり部活に顔を出したのが間違いだったわ。
「…油くさい」
早めに帰らせてもらったルーシィはコートを着込んで汚れを隠したが、匂いまでは取れないのかプンプン油絵の具の独特のニオイが全身を纏う。
校庭の側を歩いていると、すぐ近くでサッカーをしている集団が映った。
その一人が蹴り上げたボールが勢いよく飛んでいく。
「あぶない!!!」
「わー!!そこの女子!!!!」
女子ってあたし?と周りを気にしつつ振り返ると、ボールが迫って来ていた。
――ちょっ…うそでしょー!!
避けようとしたが、咄嗟に顔を両腕で庇う事しかできなかったルーシィの前に、黒いリストバンドを付けた右腕が視界に入る。
バシィッ!!
「大丈夫か?」
「……ナツ」
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