「委員会始めるので、席に着いて下さい」
「7組がまだ来てませーん」

その声と同時に教室の扉が開けられると、ルーシィは大きく目を見開いた。

「…あれ?ドラグニルくん、クラス委員だったっけ?」
「いあ、代理…」

ナツはキョロキョロと見回してから、金髪の少女が座っている方へ足を向ける。ルーシィを通り越して、椅子を引いた。


――隣に座ってくれた。


全クラスが揃ったところで、委員長が話し出す。
机の上にあるプリントに目を通しているナツの右隣から、小さく声を掛けた。

「きょ、今日は…前半期の反省するのよ」
「…ふーん」


――や、やっと普通に喋れた…。ナツも普通に喋ってくれたわ。

そっか、話をすれば良いのね。がんばれ、あたしっ!




…と、思っても何を話したら良いのかしら。


「ね、ドラグニルくんってF中だっけ?」

ナツの左側に座っていた女子が話し掛けると、何かを思い出したかのようにルーシィは口を開く。

「そ、そーいえば…この間さっちゃん達に会ったの!」

ナツは驚いた様子を見せるが頬杖をつき、一度ルーシィの目を見てからすぐに前を向いてしまった。

「…へえ、」
「そ、それで…みんな『ナツ元気?』って言ってたわよ」
「ふーん」

真っ直ぐ前に視線を向けて、そのまま何も言わない。
ナツの雰囲気に戸惑いながらも、話を続けた。

「あとね、今度みんなでカラオケとか行かないかって」
「……」
「……ナツ?」


――ええと、…全然会話になってないわね。


「そ、それで…さっちゃんがどうしても会いたいって言ってたんだ」
「…誰だ?」
「へっ?」
「さっちゃんって」
「…え、…ほら、ナツのこと好きだった――」


バサッ!!

ルーシィの声を遮り、プリントを裏に返す。
風圧で頬にかかった金髪を耳にかけ直していると、いきなりナツは立ち上がった。

「もー良いか?プリントもらったし、ノートもとったしな」
「あ…まだ反省が、」
「オレ、ずっと委員会出てたわけじゃねえし…」
「んん…でも」

委員長は止めようとしているが、少年は目を逸らす。

「あとは、“ハートフィリアさん”が7組の分のノート取ってくれるしな…」
「…は?」
「面倒見良いんだろ?…おまえ」

ノートを少女の顔に向けた。ルーシィはナツを見上げて、

「…何?」
「何って、ノート!」
「どういう意味?」
「どういう意味って、おまえ友達思いじゃん?何か他にあんのか?」
「……」

ナツの手からそれを奪った。
唇を噛むルーシィは、瞳を潤ませている。そんな顔を見られたくないのか俯いて、金髪で隠した。

「…んじゃ、あと頼むぞー」

ナツは顔を背けて、その場を離れていく。





――なんで、そんなこと言うの?



一生懸命話し掛けたのに…。



『面倒見良いんだろ?…友達思いじゃん?』



ハートフィリアさんって…、何?



すごく距離を感じる。そんな風に呼ばないでよ。


もう、知らない。


どうでもいい、あんな奴。

あんなの、あたしの好きなナツじゃないわ。


…好きじゃ、ない。



キライ。




ナツなんて、大っキライよ――









前ページへ 次ページへ



戻る
- ナノ -