オレはルーシィが好きだ。
誰にも負けない自信があるぞ、すっげえ大好きだ――。





けど、自分の気持ちをうまく伝えられねえから、すれ違ったり誤解ばかりさせてしまうんだ。
悪ぃなって思うけど、…よくわかんねえんだよな。




そんなオレでも唯一わかってること。
それは……、


『一生分のキス』


…おまえは誰としたいんだ?

オレは、ルーシィとしてえぞ!!







☆★☆★☆


いつも騒がしいギルド、――妖精の尻尾。

相変わらず喧嘩中のナツとグレイが睨み合いながら、言い争っているが、
二人とは真逆で仲の良いレビィとルーシィが、楽しく会話を弾ませている。

「ねぇねぇルーちゃん、今月号のコレ読んだ?」
「あ、…うん」
「そっか、…じゃあルーちゃんは誰としたいって思ったのかな?」

上目づかいで何やら楽しげな彼女を見て、頬を赤く染める。ルーシィは急に目を伏せて俯いてしまった。

(…あいつは誰としたいのかな。――やっぱり、……かな)

「ルーちゃん!どうかした?」
「…ううん。何でもないよ!あっそうだ、あたし買い物して帰らなきゃいけなかったんだ」
「え、もう帰っちゃうの?」

レビィの言葉に申し訳なさそうに、顔の前で両手を重ねて頭を下げた。

「レビィちゃん、ごめんね!」
「ううん。気をつけてね!また明日話そう!」
「うん!また明日ね」

元気な声を振りまき、早足でギルドを後にする。

レビィはルーシィを見送った時にふと視線を感じて、そちらへ目を移してみると、
まだ近くで半裸男と戦っている最中の相手がこちらを見てから、すぐに扉の方へと顔を向けているその一瞬が、目に映った。






今月号の雑誌の特集は、

『一生分のキスをするなら、あなたは誰としたいですか?』

大きな紙袋を両手で抱えて、その文字を頭に浮かべている。

「…ナツは、リサーナよね。……確か前に初恋だって聞いたし。大事なキスは好きな人としたいもの。……あたしは、」

風に当たって少し荒れている唇にグッと力を込めて、顔を思い切り左右に振りながら考えたくないと目を閉じた。


















はあ〜と息を吐き、部屋へと繋がる階段を上って行く。
一度荷物を足元へ下ろし、扉を開いた。

部屋からイビキが聞こえてきたことで、一瞬ドキっとしたが警戒しないのは聞き慣れた火竜の声だから。
荷物を抱え直して、今では彼とその相棒の専用になっているソファへと目を向ける。
しかし、桜色の髪が見えたのはベッドの方であった。
それを背にして、寝息を立てている。

数時間前に氷の魔導士との接戦で、疲れたのであろうか。

テーブルへ荷物を下ろして、ナツの側に寄りながらしゃがみ込んで彼の顔を覗いてみた。
ふわりと微笑むルーシィ。

(…無防備にかわいい寝顔見せないでよ。……独り占めしたくなるじゃない)

起こさないように静かに顔を寄せ、頬にキスをした。
息を止め触れるだけで、音は出さずそっと。

するつもりはなかったが、身体が勝手に動いたのだ。
自分自身、驚きを隠せないように離れると、同時に紋章が入っている方の手首を掴まれて、引っ張られた衝撃でハッとした。

「……ルー、シィ?オレはこっちにしてほしい!」

「…え、ナツ!!?…おおお、起きてたの!?」

ナツは自分の口元に人差し指を当てている。

ウソでしょう?と戸惑いがちに、その場から立ち上がって距離を置こうとするルーシィを余所に、掴んでいた手首に力を込める。
ナツの言葉が頭に入っていたのかわからないが、眉を上げてルーシィが口を開いた。

「…ナツがしたいのは、ん?してほしいのは“あたし”じゃないでしょ。……それに唇は大事にしなさいよ!」
「あ?…だから言ってんだろ」
「何言ってるのよ!」
「おまえこそ何言ってんだ?」
「だ、だから…」

掴まれていない左手で顔を覆うと、耳にかかっていた金髪が揺れた。

「ルーシィは、誰としてえんだ?」
「えっ?」

ルーシィは大きな瞳を見せて、ナツの顔を見上げてから首を傾げる。彼女の仕草にどきりとするナツであったが、視線を逸らして話しを切り出した。

「一生分のキス…だっけか?レビィと話してただろ」
「ちょ、あんた聞いてたの?」
「いあ、ルーシィが急に帰ったから気になって、…レビィに聞いたんだ」
「気になってって…ナツ、その時グレイと喧嘩してたじゃないの」
「そ、そうだけどよ。…ずっと笑ってたルーシィがいきなり変な顔してたから、気になるじゃねえか!」
「なっ、…変な顔ってなによ!!」

グレイと喧嘩中だったのに。
それなのにあたしのこと見てたってことよね。ナツの方が変じゃない!
それにずっと笑ってたって…そんなこと言われたら。

普段通り敏感に反応したと思ったが、段々と頬が赤らんでくるルーシィをナツは気になりつつも、声を張り上げた。

「今は、そんなこといいんだよ!ルーシィは誰と――」
「イヤッ言わない!」

言い切る前に遮られ、グッと顔を上げた彼女を見つめる。
唇を噛み締めて顔を背けたルーシィを視界に入れて、

「はあ?何でだよ!!」
「じゃあ、あんたは?…ナツは簡単に言えるの?」

眉を吊り上げて、瞳に涙を浮かべているルーシィを不思議に感じながら答える。

「あー、まあ…言えっかな?」
「言えるの!?…そ、そうよね、ナツだもんね」
「オレがしてえって思うのは、――ル、ぶふっ!?」

ルーシィは一瞬、肩の力が緩んだが、慌てて目の前に見えるナツの口を両手で塞いだ。

「やだ、言わないで!!」
「うぐ……、――…シィ?」

冷たい手が唇に当たる。
ルーシィは咄嗟に視線を下に向けるが、前髪の隙間から覗く瞳から頬へと流れるものを見逃さなかった。

「…リサーナでしょ?わかってるから。もういいのよ」

――は?
わかってるって、何言ってんだよ!意味わかんねえ!!
つーか、ひとりで納得すんなよな!

ナツは掴んでいた手首を放して、先程自分の唇を塞いだそれを握った。
相変わらず冷たくて、少しばかりか震えている。

「……おまえ、さっきオレにしたこと覚えてねえのか?」
「えっ?」

「それに、オレが言ったことも聞いてねえのかよ!!」
「えと、さっき…って?」

震えが止まってきたことに気づいてナツはギュッと指に力を入れ直した時、その手が握り返された。

「なんで、ルーシィが決めんだよ!!わかってねえ!!…オレは初めても、これからもずっとルーシィと、してえぞ!!」
「…へっ?あたし?」
「一生分のキスってよくわかんねえけど、…オレは、オレはルーシィとしたい!!」
「……」

「おまえは?ルーシィは、オレだろ?ここにしてくれたのはそういうことだって。…オレの勘違いじゃねえよな?」

自分の頬を指差して、問い掛けてくる。珍しく自信がないように。
だが、真剣な瞳を向けて。

「あ、う…」
「…ルーシィ?」

(イヤなのか。…そんなことねえよな)

冷たかったルーシィの手が、ナツの熱を受けて温かくなっている。
片方でも彼女と繋がっているという証がナツは嬉しく、たとえ嫌がられても、もっと温めてあげたいと無意識に考えていた。
すると、

「――……が、いい」
「んあ?」

「…あたしは、――ナツと、したい」

俯いて目を合わせてこないが、滅竜魔導士の彼には十分届いた。

ルーシィは照れながらも自分の想いを告げたことで、スッキリしたのか笑顔を向けてくる。
そんな彼女の変化に胸が高まるが、深呼吸。

「ふぅ…。んじゃ、もっとこっち来いよ!!」

ルーシィを引っ張って、ベッドへと腰掛ける。
自分の側に寄せると、真っ赤に染まった彼女の頬を撫でた。

ルーシィ――。

「わわっ!?ナツ、ちょっと待って!」

常日頃の至近距離には慣れてしまったが、今は全く違う。
ルーシィは急に慌てて、顔を近づけてくるナツの胸を押し返してきた。
その行為にムッとしたナツは、

「ダメだ!待たねえぞ」
「ちょ、ナツー!待ってったらー」

側に置いてある枕を見つけて、勢いよく顔に当てた。

「いってぇ…何すんだ!ルーシィ!?」
「う、ごめんナツ。あたし、唇荒れてて。…クリーム付けても良いでしょ?」

「はあ?そんなん塗っても、すぐ取れちまうだろ?意味ねえ……、おっ!!」
「いーでしょ!あたしがイヤなの!!――…ってその顔、あんた何か企んでるわね!?」

面白いものを見つけた時のように、目が光ったナツに対して距離を取ろうと身構える。

「ルーシィの唇、オレが治してやんよ!だから安心しろ」
「んな、………っ!?」

両腕を掴んで、逃がさないように引き寄せた。
力を緩めるが逃げないことがわかると、一旦放して左手を後頭部に右手は腰へとまわしながら顔を近づけていく。
接触する瞬間、お互いに瞼を下ろした。

ルーシィはナツの腕をギュッと掴み、温もりを感じながら彼に身を任せていく。
角度を変えて何度も重ね、繰り返していくうちにルーシィの唇は潤いを取り戻す。

「……んぅ、」

さすがに長い、息が苦しくなってきた。
酸素を取り入れようとゆっくり唇を離し、また近づこうとしたが――

「…ナツ、あたし」
「おう、なんだルーシィ?」

名を呼ばれ、彼女と視線が絡んだ。
ルーシィの両腕がナツの背中にまわり、そっと遠慮がちに触れてくることに彼女らしさを感じて、口元が緩んできた。

ナツは頭の中がルーシィでいっぱいになっているが、その相手から更に追い打ちを掛けられる。

「……うれしい」

恥ずかしいのかナツに見られないように、顔を胸に押し付けてきた。

「…っ!?――お、オレも、すっげえうれしいぞ!ルーシィじゃねえとこんな気持ちにはならねえし!」
「あたしも。…ナツだから、安心するのかな」
「ホントか?」
「うん」

「ルーシィ…あったけえな」

ギュッと抱き寄せる。
そっと触れていたルーシィも力を込め直してきた。

「ナツには負けるわよ!」
「へへ…そうだな」

「…わっ、ナツ…苦し、」

嬉しさのあまり加減を忘れていたナツ。
腕の中で苦しがっているルーシィを視界に入れて、不意に思い浮かべた。

「悪ぃ…でもよ、一生分のキスだぞ!こんなもんじゃ足んねえよなー」

ナツの足らないという言葉にピクリと反応したが、恐る恐る顔を上げてみる。

「それはそうだけど、限度ってものが――」

「…もっかい、いあもっとしてーな!!」

「何言って…、きゃああああ、もうっ!ナツー!!!!」

抱き合いながら、そのままシーツへと倒れ込むふたり。
押し倒したことで、ルーシィに覆い被さるナツの背中が見える。両手をルーシィの左右に置き、距離を保って見つめ合っている。

「…ルーシィ」「ナツ…」

同じタイミングで名を呼び合い、ナツはルーシィの首に腕を絡ませてギュッと抱き締めてから再び求めている場所へと近づいていった。

しばらく桜色の髪と金色の髪が混ざり合っていたが、それを邪魔するものがいることにふたりはまだ気づいていなかった。







☆★☆★☆

無理やり終わらせた感があり、すみません(>_<)

好きの言葉を伝え合う前にキスしちゃう仲(笑)
ナツとルーシィならそういうのも良いと思います。甘いナツルーになったでしょうか?
うーん。
BGMで、倉木麻衣の“1000万回のキス”を聴きながら書いてましたが…いつの間にか方向性が変わり…なかなか思うように書けませんでした(>_<)
曲は良いのにね。私の力不足故…。

でも、これはこれでまあいいかと。
二人が楽しそうにしてくれたら私はそれで良しとします^^自己満ですものね。うふふ。
ナツルーは楽しいです♪二人がそういう気持ちにさせてくれるって言うのかな。
原作で、絡んでなくても小さな部分でもふたりが一緒にいると、そこだけでぱあっと明るく見えるんだよね。
楽しそうだなぁと思ってしまうのは、ナツルースキーだから、しょうがないことなのでしょうね。
ナツルーラブ〜☆






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