※中途半端で終わります。(続きが書けませんでした)




「うわーん、ルーシィー!ルーシィー!!」
「ちょっと、どうしたのハッピー!?」

クッションに凭れ掛かって気持ち良さそうに眠っていた青い猫は突然起き出し、ソファに座って本を読んでいるルーシィに駆け寄ってきた。
胸元にギュッと抱き付きながら、その小さな体が小刻みに震えている。

「こわい夢を見たんだ。…こわいよルーシィ。オイラのそばにいて!」
「うん、大丈夫よ。一緒にいるから、もう怖くないわ…」

ゆっくりと上下に背中を撫でて、安心させようと微笑みながら口にする。
少し落ち着いたのか、震えていた身体が徐々に治まってきた。
ゴシゴシと前足で顔を拭い終わると、ルーシィの服を強く握りながら見上げてくる。

「ルーシィ…オイラのお母さんみたいだね」
「へっ?そ、そうかしら。…あ、でもハッピーのママはいるのよね。…あたしは、…今はとりあえず代役ってところかな!んーと、うまく言えないわね」
「ルーシィ?…それじゃ、ナツは?…オイラのお父さんじゃないのかな」

服の袖を掴みながら潤みがちで見つめてくる。その瞳から逃れようとルーシィは窓際に視線を向けた。

「んーと、ナツはハッピーの…。…確か、前に聞いたわねー」
「それって、オイラが小さい頃の?」
「そうね、あたしはふたりの…ううん、三人の邪魔はしたくないわ!」
「ルーシィが邪魔?そんなことないのに。…ルーシィ、三人って――その話、誰に聞いたの?」
「ん?…ええと、ミラさんからだったかな。…あ、酔ってたカナだったかも?」

ハッピーは首を傾げるが、眉を下げて微笑むルーシィを見ていると何も言えなかった。
時にはエルザよりも怖いのではないかと思う程に怒り、叫ぶルーシィの姿を相棒の側で見ているハッピーだが、いつも包み込んでくれるような温かい彼女が大好きで、何よりも安心しているのだ。
小さい頃に起きた出来事もちゃんと覚えている。
だが、ハッピーは今の居場所が大切であった。

あの桜髪の相棒はどう思っているのであろうか。

静かなハッピーに、どうしたの?と頭を撫でて問い掛けるルーシィにスリ寄った。
すると、

「ルーシィが邪魔?…おまえ、なに言ってんだ?」

背後から聞こえてきた声にビクッと肩を揺らし、振り返ると窓枠から足を下ろそうとしている声の主が現れた。

「ナツ!?アンタ今日は来ないって言ってたじゃない?ハッピー頼むって…」
「あー、まあな。でもよ、なんか身体がルーシィの部屋に向かってたんだ。…だから来た!」

ニカッと笑うナツに目を細めて、抱き締めていたハッピーをそっと自分の膝の上へ移した。
ナツはルーシィの足元に置いてある本を退かして、距離を縮めながらそこへ座り込もうとしたがじーっと何かを考えるようにして、彼女と共に相棒を見ている。
ナツ?と口を開こうとしたルーシィの身体がふわりと浮いたことで、落ちそうになったハッピーを抱えた。
その一瞬で、ナツはルーシィが座っていた場所に今度はナツが腰かけ彼の膝の上にはルーシィが乗せられている状態に変わっていく。
胸にはハッピーが、背中にはナツが…。
お腹に腕をまわすナツは、ルーシィを抱き締めている格好である。

「ルーシィが邪魔ってどういうことだ?三人って…オレ達だろ?ちげえの?」
「あ、…――。」
「ルーシィ、元気ねえのな?」
「…そんなことないわ」
「そっか?…変だろ?な、ハッピー!」
「あ、あい…」
「んだよ、おまえら変だぞ!!」

ナツ…と口を開いたルーシィは、抱き締めていた彼の相棒から手を離して、ナツの両手を握り、自分のお腹にまわしているその腕を解こうと力を込めた。


「ごめん、ナツ。腕…放して」

がっちりとお腹にまわしている腕を解こうとするルーシィの力に反抗して、ぎゅうっと抱え込むナツは彼女の言葉に納得がいかないのか口を尖らせている。

「あ、違うよ!イヤだからじゃなくて。喉…渇いたから、何か飲み物持ってこようと思って…」
「ん?あーそっか、なら…良いけどよ!」

ルーシィの背中に額を押し付けてから“わかった”と頷き、ナツはようやく腕の力を抜いた。
そのタイミングで立ち上がったルーシィは、ちょこんと座りながら足元に絡みつくハッピーを持ち上げて、ナツの膝の上に移した。

ルーシィが口にしたことは、咄嗟に出た言い訳。

邪魔はしたくないから…その想いが強いため、ナツからの抱擁も受け止めてはいけないと心に決めていた。
普段からナツとの距離に戸惑いながらも、彼の温もりを感じていたい気持ちを抑えて
今回も本心では嬉しくてたまらないのに、どうしても自分から離れようとしてしまうのだ。




キッチンへと向かい、湯を沸かそうとしたところで、紅茶の葉が切れていたことに気づく。

――ちょうど良い。

外の空気を吸えばまた気分も変わるだろうと考えて財布を手に持ち、騒がしくしているふたりの側へ近寄った。

「ん?ルーシィ、どっか行くのか?」
「オイラも行くー!」

飛びついてきた青い猫の頭を撫でて、

「紅茶、買い置きが無くなってて…、ちょっと出かけてくるから留守番してて!わかってると思うけど…これ以上、汚さないこと!!いい?…返事は?」
「あい!」
「……」
「ナツ?」
「…オレも行くぞ!」
「…っ!?」

良い返事をするハッピーに対して、いつもと様子がおかしいナツは明らかに不機嫌な声で答えてくる。
いつの間にか手首を掴まれていた。その先にいるナツを見上げて、

「ハッピーを一人で置けないわ。…父親でもある相棒のあんたが、一緒にいてあげなきゃね?」
「父親?…なあ、ルーシィ…おまえさっきから何言ってんだ?それって…昔の、過去の話だろ?」

俯いているルーシィの顔を覗こうとするナツに驚き、掴まれていない方の手で彼の顔を覆った。

「ぶっ!?…おい、ルーシィ!!!」

ナツが叫んだ一瞬を見計らって彼の手を解き、その場から離れようとしたルーシィ。
腕を伸ばしても彼女には届かないと判断したナツは、大事なマフラーを首から取り、それをルーシィの身体に巻きつけた。

「きゃー!!な、何するのよ、ナツ!!」
「オレから逃げようとするおまえが悪ぃんだ!…なんでオレから、いあ…オレらから離れようとすんだ?」

ルーシィは、怒ったように眉を上げていたが、瞳は潤んでいた。
ふぅと息を吐き出して巻きつけられたマフラーの端を手に取り、気付かれないように涙をそっと拭った。








戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -