おぞんさんから頂きました、独伊学パロです。
ドイツ、ドイツ!と叫ぶ声とともに、騒がしい足音がばたばと教室に駆け込んできた。窓際の席で本を読んでいたドイツは、向かいに座るプロイセンと同時に顔を上げ、彼の名を呼ぶ。
「どうしたんだ、イタリアちゃん」
「教室内では静かにしろ、イタリア」
「あれ?プロイセン、何で2年の教室に居るの?」
「ケセセ、テストで赤点取っちまったからな。今ヴェストに教えてもらってるんだ」
「え?弟に?」
「………………イタリアちゃん。それは言わないお約束だぜ…」
午後の授業10分前にやってきたイタリアの瞳には、一切の悪意がない。兄弟揃って顔も良く運動神経もばつぐんなのに頭だけ差が付いてしまったという事を躊躇いなく断じてしまう彼はある意味……残酷なくらい鈍い。
「それよりどうしたイタリア」
「あ、そうだった!聞いてよ、ドイツ!」
息巻いてドイツに駆け寄るとイタリアは目を輝かせた。
「俺、ちゃんと約束果たしたんだよー!」
そうして全身で褒めて褒めてと擦り寄るイタリアにドイツは一瞬驚いた表情をしたが、すぐにに頬を緩めて彼の頭を撫でてやった。
「それは凄いな、イタリア。偉いぞ」
「約束って、なんのことだよ」
勉強にも飽きたのだろう。完全に蚊帳の外だったプロイセンが、首を傾げて二人に尋ねる。するとイタリアは「うん」と頷き、プロイセンに向かってひらひらと手のひらを振った。
「ドイツとね、約束してたんだ。今度の試験で赤点が無かったらご褒美くれるってね」
「試験…?」
再び首をひねったプロイセンだったが、はっとした表情を浮かべると、「も、もしかして」とイタリアを指差した。
「こないだあった期末の話…?」
「あったりィー」
にこりと得意げな笑みを浮かべてイタリアが全ての教科の紙切れを突き出す。確かにそこに書いてある点数はいずれも赤点ギリギリではあったが再試験までには至らない点数であった。
「うおっ、やべえイタリアちゃん、マジで!?今まで絶対追試組だったのに!!すげぇじゃん」
「ヴェー、まあこのくらい俺にかかればお茶の子さいさいってことだよ」
「……どれもギリギリではあるがな」
「いや、でも今までの成績から考えると飛躍的進歩じゃんかよ、ヴェスト」
腕を組み感心するプロイセンに、イタリアも嬉しそうににかっと笑う。そして次にドイツを見ると、ねだるような顔つきで両手を合わせた。
「ねっ、ほら、プロイセンもこう言ってるし。ご褒美!約束だよ、ドイツ」
「ああ、それは良いんだが…ここでか?」
「勿論!俺はこのために頑張ったんだから!!」
「仕方ない…」
ドイツはちょっと困った顔で笑ったが、約束は約束と考えたのだろう。あっさりと頷くと「じゃあ、ご褒美だ」とイタリアの頬を撫でた。
「やった!」
にわかに喜ぶイタリアに、プロイセンがはてご褒美とはなんだろう、と考えるよりも先に二人は動いた。
――ちゅっ
そんな恥ずかしい音が、聞こえた気がした…。
いや、絶対に聞こえた。
そして、プロイセンは動けなかった。
「なっ、ちょっ…えっ…」
なんだよ、今の。
そう言おうとするのに、声が出ない。プロイセンだけではない。運悪く今の場面を目撃してしまった生徒が、思わず教科書を取り落とす音がバサバサと響いた。
「……えーっと、あのー…イタリアちゃん…?」
口の端をひくひくさせ、プロイセンが教室中の生徒を代表するかのようにドイツとイタリアに声をかける。イタリアはそんなプロイセンの様子を気にする素振りすら見せず事もなげに言った。
「約束の、キスだよ、キス」
「キッ、キスって、おまえらっ」
「なんだよープロイセン、キスくらいで大げさだよ」
「おい、ヴェスト…これは…」
プロイセンが困ったように眉根を寄せながらドイツに助けを求める。しかし残念ながら、ドイツとてプロイセンの常識外にいることを彼は悲しいかな知らなかった。
「ああ、すまんな。いきなりでビックリしただろう」
照れて頭を掻きながら、ドイツがはにかむ。
「やはり、俺としてはテストの褒美がキスなんて、 いつもしてるから褒美にならないと言ったんだが…」
「そんなことないよ。ドイツのキスは世界一だもの」
「また貴様は…って、あれ、兄さん?兄さんっ?」
慌てたドイツの呼び掛けを聞きながら、弟達の知りたくない一面を知ってしまったプロイセンは、遠く思ったのだった。
ああ、勝手に、やってくれ!!
卒業祝いにおぞんさんが独伊をくれたんだ、俺、これから頑張れるよ゚+。(*′∀`)。+゚
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