咲かぬリコリスの哀願



あぁ、好きです、私はあなたが好きなのです。
パピロンはその思いをうちに秘めながら、眠っている聖女リヴィエールをそばで守る、その騎士を見つめていた。騎士、バームはパピロンの気持ちに気づかないだろう。バームの一番はリヴィエールであり、すべての原理が彼女だ。それで十分だと言い聞かせながら、パピロンはそこにいた。
「リヴィエール様はお休みになられた、言伝てなら、俺が預かるが」
「違いますよ、遊びにきたのです」
「遊びか、お前に似合わない言葉だな」
「そうでしょうか。私だって、気を抜きますからね」
「悪くない」
ざわざわ、と何かがうごめいた。それが何か、パピロンは知っている。
「何用ですか、フリュイ」
パピロンと同じく三常侍のフリュイだった。女性的な美しさを持つ天使も、近づくと刺ばかりが目立つ。
「御神に、お使いを頼まれましたの」
口元で笑いながら、フリュイは揺り籠に近づいた。それをバームが遮った。フリュイの顔が明らかに変わった。バームは怯まない。バームにはリヴィエールを絶対視して、すべてから守ることを決めている。そんなバームの存在を、フリュイも、もう一人の三常侍のボンも、気に入らないのだ。バームはリヴィエールから直接選ばれた騎士であり、本来なら騎士にはなれない存在だからだ。御神に庇われていることも、癪にさわるのだろう。
「姫様はいつも通りだ、何も、変わらない。もういいだろう、貴様は帰れ、フリュイ」
「名前、呼ばないでくださらない?」
フリュイは花を一輪、揺り籠に投げ入れた。真っ赤な、花だ。皮肉なメッセージを残し、フリュイは帰っていく。
もうすぐかもな、というバームの言葉を、パピロンは聞かなかったことにした。
嫌だ、別れたくない。





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透徹



 

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