拝啓、十八歳の僕たちへ!

十八歳と聞いて思い浮かぶ言葉、十八禁。
十八歳の誕生日を迎えた友人に送る言葉、「やったね、TSU●AYAの十八禁コーナーに入れるね!」。
このようにはっちゃけられる時期、つまり高校生。高校生の十八歳の誕生日とは、意味のあるものなのである。たぶん。
追記。十八禁は、十八歳であっても、高校生のうちはダメですよ。

■ばしょんさんが入室しました。
吉田(仮):めんどくさいの、ギター(((゚∀゚)))
ユウヒ:ギター?
吉田(仮):変換ミスorz
ばしょん:変換ミス、ダサい\(^0^)/
ユウヒ:めんどくさいの、ギター(((゚∀゚)))
原白:めんどくさいの、キター
原白:訂正、めんどくさいの、ギター(((゚∀゚)))
吉田(仮):俺らつえぇな!
ばしょん:いじめカッコ悪い!
原白:仕事忘れてた。嘘。おやすみ
■原白さんが退室しました。

吉田(仮):今日は俺の誕生日です!
ばしょん:おめでとー☆(^3^)/
吉田(仮):蟻が十匹
ユウヒ:おめでとうございます、十八歳ですわね
吉田(仮):お嬢、ありがとう!! 大好き、顔知らないけど、愛してる!!
ばしょん:差がひどすぎるw
吉田(仮):明日、ツ○ヤ行ってくるぜ!
ユウヒ:あら、まぁ
ばしょん:何か借りんの?
吉田(仮):違う違う
ばしょん:(´・ω・`)?
ユウヒ:はしたないですわ
吉田(仮):18禁コーナーに入るんだー!!
ばしょん:Σ(´□`;)
ユウヒ:私はここらへんで失礼しますわ。明日はデートがありますので
ばしょん:デート!?誰と!?
■ユウヒさんが退室しました。

夕陽は電源ボタンを二度押した。今日のチャットはこれで終わりだ。枕元のライトを消して目を瞑った。明日はデート、なのだ。相手の三島曰く、デートらしい。夕陽と三島は、間違うこともなく、確実に付き合っていない。
三島牡丹、チャットネームはユキオ。チャットルーム『文学史上の何たら』の新顔と思わせて、実は古株。チャットネームを変えただけだった。それを管理者から教えられた際に納得した。しかし、なぜ夕陽がユウヒだと気づいたのかは、いまだ不明のままだ。
そもそも、なぜ三島は夕陽が好きなのか。夕陽は数日前の衝撃を思い出した。それはそう、三島と狩野に告白されたことだ。三島、女子、クラストップ、いつも読書。狩野、男子、友人、美術部部長。京極夕陽、受験生、恋愛経験値ゼロ。高三にして、ハチャメチャな青春がやってきた。ある意味で、性春?
「いやいやいや、いやいやいやいや」
ないない。

三島の私服は、素直におしゃれだった。もっと地味な格好だと思っていた。口には出さない、もちろん。色は控えめだが、アクセサリーがきらきらしていて、三島の雰囲気にあっていた。近寄りがたい雰囲気の三島だが、こうして関わってみると見方が変わる。クールで大人っぽい女の子だ。それなのに、これまた意外、中身が少々残念系。かわいい女の子が好き。というか、バイセクシャルなのだそうだ。それだけなら別に、個人の性癖のようなもので、まぁ、ありだと思う。しかし、だ。三島はそれだけではなかった。
待ち合わせの駅前で、先に来ていた三島は、壁際でいつものように本を読んでいた。カバーがついているのでタイトルはわからない。
「牡丹、何を読んでたの」
「『愛欲、世界の果てに』」
「恋愛小説?」
「ボーイズラブです」
何でこんなにも堂々とカミングアウトできるのだろう! 結果、三島牡丹は腐女子でした。

気を取り直して、デートだ。まだ狩野と出掛けたこともないのに、夕陽は三島とよく遊んでいた。やはり同性だからか、絡みやすいというのもある。
ショップに入って、気に入る服を探して、見るだけ見て、また次のショップに入る。スカートやシャツを探す夕陽に対して、三島はアクセサリーなど小物を見定めていた。シンプルすぎず、飾りすぎず、三島のセンスは確かなものだった。
「これ、夕陽ちゃんに、プレゼント」
三島が夕陽に手渡したのは、買ったばかりのブレスレットだった。可愛らしいハートの飾りがあしらわれている。夕陽には似合うが、三島の雰囲気には似合わない。はじめから夕陽のために選んでいたようだ。
「ありがとう。でも、悪いよ」
「気にしないで、私が勝手に買ったのだもの」
「じゃあ、ひと休みにカフェに寄ろう。私が出すから」
「別に、構わないのに。夕陽ちゃんはいい子だね」
「恥ずかしいこと言わないでよ」
余裕があるのは三島で、夕陽は不馴れな様子が一目瞭然だった。チャットルームに入り浸っている彼女だ。友達とカラオケやお昼を食べに行くことはあるが、一日どこかへ遊びに行くことはなかった。そういう面では、人付き合いが薄かった。そのぶん、三島とのデートは新鮮でもあったのだった。
「牡丹はコーヒー派? それとも紅茶派?」
「どちらかと言えば、紅茶かな。夕陽ちゃんは?」
「市販のリ○トン」
「なるほどね」
おしゃれなカフェにリプ○ンはない。

数日後、本屋にて。

これ以上、悠輔は喋ることができなかった。泣きながら新城に抱きついた。新城の仕立てのいいスーツに涙のシミができる。新城は何も言わずに悠輔を強く抱き締めた。悠輔が胸の中から顔を出して見上げると、いつも余裕たっぷりの新城が顔を歪めていた。もう、何も言うな。奪うように、噛みつくように、新城は悠輔にキスをした。手を悠輔のシャツの中にいれて、日に焼けた肌をまさぐった。扇情的な声をあげながら、悠輔もまた、新城のスーツを脱がせていた。

「は、は……」
夕陽は立ち読みしていた本を閉じて、棚に戻した。タイトルは、『愛欲、世界の果てに』。恥ずかしすぎる。夕陽は腐女子にはなれなかった。しかし、十八歳の扉は、開きかけていた。






 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -