隠蔽されたこの美しい世界で




フランソワはもうリヴィエールには会えない。聖女の前任である彼女は、現聖女であるフォンテーヌに斬られて消えてしまったのだから。
フォンテーヌが自らその事実をフランソワに告げた。彼女は笑った。彼は笑えなかった。

三常侍の一人として神に仕える天使、パピロンが舞い降りた。今日いつものようにフランソワは森にいた。すっかり癖になってしまったようだ。追い出されることもない。フランソワには、これが特別なのだという自覚はないのか。困ったものだ。
「おや、フォンテーヌ様をお嫌いになられましたか」
「いや、……どうだろう。パピロンこそ、どうなの。リヴィエールが好きだったんだろう」
「私は御神の近臣、そのようなことを聞かないでいただきたい。それに、あなたは大きな勘違いをしています」
「勘違い?」
「お気になさらず」
意味深に笑うパピロンに、フランソワは言葉を返さなかった。

世界は常に、無数の嘘によって支えられている。だからこその、美しさなのだ。
「あなたがこの森に魅入られているのであれば、一つ相談があります」
こちら側の存在になりませんか。
それ即ち、人の子を止めることを指していた。簡単に決められることではない。それは神の愛を受ける者たちだ。裏切りは、つまりリヴィエールと同じ最期を遂げることになる。
パピロンは音もなく、フランソワの右腕に剣を握らせた。見覚えがある、これはリヴィエールの騎士だったバームの剣だ。
聖女の守護天使、騎士の証の剣だ。フォンテーヌの騎士になる。
いつもの好奇心は、なくなっていた。軽い話ではないのだ。

「僕は……」



フォンテーヌの長剣は今、神のもとにある。彼女の格好も、以前と比べて淑やかなドレスに変わっていた。彼女の近くには、騎士がいた。はて、それは誰のことか。
今日も世界は安寧に包まれている。





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