tea time coming soon

 久しぶりに入ったヒロの部屋。わたしの視線は、窓際に置かれた鉢植えに流れていた。あれは前に来たときには無かったものだ。近寄って植物を見てみる。なんだか良い香りがする。この形、香り……、分かったぞ。
「レモンバームだ」
「正解。和名を香水薄荷(コウスイハッカ)という」
「聞いてない」
 和名、ね。どこでそんな知識を覚えてくるんだよ。そんなしゃれた名前があったのか、こいつ。知らなかった。コウスイハッカ。よし、わたしはまた一つ賢くなった。
「これはおしゃれのつもりか? ふん、伊達男め」
「そんなにツンツンしないで。明ちゃん、可愛い顔がもったいない」
 可愛いとか、キャラじゃないんだよ。可愛くないし、まして可愛い子になりたいわけでもないし……。へらへら笑うな、ヒロのくせに。
 なんだか調子が狂うな。
「明ちゃん、紅茶好きじゃんか」
「……それで?」
「これでオリジナルティーを作ろうと思ってね。明ちゃんのためだよ。飲んでくれるよね」
 ほんとに調子が狂う。ためらいもなくそんな台詞を言えるお前が、なんだか羨ましく思えてきた。ヒロのくせに、生意気だ。
 わたしは何も言えなくて、やわらかなクッションに顔を埋めた。クッションはどこか、ヒロの匂いがした。ちらりとヒロを見ると、てきぱきとお菓子を用意していた。あのチョコチップクッキー、わたしの好きなやつだ……。あと、お気に入り洋菓子店のマドレーヌ……、
「さ、食べようか」

 わたしは口を「ばか」と動かしてから、黙ってチョコチップクッキーを頬張った。さくさく。




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テーマは「幼なじみに恋する」



 

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