短編 | ナノ

▼初恋は10年前

大学が休みだからと軽い気持ちで始めた部屋の掃除。
一応普段から片付けてはいるので掃除自体はすぐ終わったが、ついでにクローゼットの中のものを整理しようと扉を開けると、出てきたのは小学校の時友人と交換した手紙だったりシール帳など。
微笑ましい小さな頃の思い出だが、いかんせん量が多すぎる。ダンボール2箱くらいあるんじゃないだろうか。

服を入れるスペースも圧迫されていることに気づき、これはいかんと選別を始めたのが約30分前。
その途中で出てきた缶の中に、懐かしいものを見つけてふと手を止めた。

「栞と…あぁ、あった。包み紙」

栞の近くに、小さく畳まれたぶどう味の飴玉の包み紙。
10年前にあった、小さな男の子からのプレゼントだった。




10年前。私がまだ13歳だった時、通学路で毎日のように会う小さな男の子がいた。

5歳か6歳くらいの男の子は、若々しいお母さんと小さな女の子と一緒に買い物にいく行き帰りのようで、お母さんの方とはたまに会話もしていたのだ。

そんな生活が2.3ヶ月続いた夏、だっただろうか。
男の子が見つけたのだというクローバーと、持っていた飴玉を渡してくれて

『お前!しょうらいランボさんが迎えに行ってやってけっこんしてやる!それまで待ってるんだもんね!』

そう言ったのだ。
うん、そうそう、ランボくん、なんて名前だっけ。
近所のお姉さんというだけで少し魅力的に感じる年頃なのかな、なんてその時は思って、『じゃあ待ってるね』なんて返して。

帰ってから押し花にして、ラミネートで栞にしたクローバーと、食べた後なんとなく捨てるのがもったいなくて一緒にとっておいた包み紙。

くすぐったいような思い出にくすくすと笑う。
あの時5歳だとして、今が15歳。お母さんが美人だったからあの子もきっとカッコ良く育ってて、私のことなんて忘れてるんだろう。
それでもやっぱり捨てるのは小さなランボくんに申し訳ない気がして、栞と包み紙を机の上に置いた。


身長がすごく伸びて、かっこ良くなったランボくんが赤いバラを持ってうちに来るのはその1ヶ月後の話。


(なまえさん!迎えに来ました!)

(……えっ?)


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