天から地へと下る
大阪の覇権を決める戦いが始まる。
そんな時だというのに隣に座り込んだ青年、空谷三月はいつも通り、何を考えているのかわからない灰色の目で虚空を見ているだけだった。
相変わらずだと呟き、紅灯商会の構成員、薮田算哲はポケットに手を突っ込んだ。
開催を宣言されてから数分、最上階に居る人数は少ない。
地上を目指せという命令に従って、多くの構成員達が先を争って下の階を目指した為である。
算哲は体力に自信が無かった故に先を急ぐことは無かったが、もう一人の三月は別である。
「お前ならとっとと下行けるだろ、行けよほれ。と算哲はぼそぼそと面倒くさげに呟く」
ト書き風の奇怪な口調で語りかけると、三月は小さく返事を返す。
「おなかすいてない」
大欠伸をし、三月は気だるげに立ち上がる。
「またそれかよ、今度は何食いやがった、吐けほら、と」
「やだ」
「そう言う吐けじゃねえよ、言え!と言う算哲の語調は荒い」
面倒な口調で三月を問いただしつつ、算哲は周囲を見渡す。
人の数はまばらで、先程まで残っていた奴の大半が下に向かったらしい。
「えー……それ」
三月に視点を戻す。
三月の指さす先を見れば大きく床が抉れていた。
何事かと思い、その床を強めに踏んでみる。
嫌な音がし、床が更にへこむ。
「バカかお前なんでこんなもん」
「おなかすいてた」
「…………まあいい、いくぞ三月、と算哲は呟き床を蹴る」
宣言通りに床を強く蹴る、すると床は崩れ落ち、人一人が通れる位の穴が空いた。
算哲は三月の手を引き、下の様子を見てから飛び降りる。
算哲が下に到着したのを見届け、三月は穴から飛び降りた。
二人は一つ下の階へ降り、遂に抗争に本格参戦することとなるのであった。

続く
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