日刊西京新聞夕刊
「は?」
荒神第一はいつも通りの人を馬鹿にしたような声色でそう尋ね返した。
しかし、絵を描く手を止めることは無く、赤い絵の具を乱雑にキャンバスに塗りたくった。
「ですから荒神雷蔵、誘拐されまして」
「はァ?」
今度は半ば睨むように振り返る。
筆をカチャンと乱暴にパレットの近くに放り出し、苛立ち気味に立ち上がった。
「だからさぁ、それがボクに何の関係があるっていうのさ。雷蔵くんがどうなろうが知ったことじゃないよ」
「……荒神第一、冷たいですね」
「古式ちゃんには言われたくないよ」
「はあ」
荒神古式は無表情のまま、第一の言葉を適当に返す。
彼女の返答はエラーメッセージのようなもので、人工無脳が良くわからない返答に適当な発言を返すことに近い。
第一はこの女が嫌いだった。
「暗号がどうとか知らないけどボクは関係ないじゃない。なんでボクに頼むのさ」
「本職、情報処理に関して得意です。ですが、整理整頓だけです」
「一々行間を読ませようとするのはやめてよ。キミと話してると疲れるんだよ」
ダンと机を壊さない程度に机を叩き、出ていけと仕草で示す。
しばしの沈黙の後、古式は立ち上がり個室の部屋を開く。
「それでも、あなたは気になるはずです」
扉を丁寧に開け、一度会釈をして古式は部屋を後にした。
「なんだよあいつめんどくさい」
筆を再び手に取り、第一はベタベタと適当な色を塗り始めた。

続く
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