遠回りの
嘘は握りしめた資料に少しだけ目を通した。
わけがわからない情報がならんで居るだけだった。
字は走り書きらしく、少し歪んでいるが、印刷された字を簡略化しただけのようで、ひどく美しい形状の字が並んでいた。
誰が書いたのかは知れないが、何か重要な情報が書いてあるのかもしれない。
嘘は無い頭を振り絞って情報を整理する。
資料のページをめくると、メモが挟まっている。
金額が数個書いてあった。
金額事態が大きく、全く現実味のある内容には見えないが、ひとまず同じ場所に挟んでおく。
嘘は愚かだったが、慎重だった。
これは涅槃本人から引き継いだ性質であり、本人生来のものではないが。
「わけわかんないや」
ぼそりと呟く。
嘘はさらに乾かせる環境をさがしてさ迷う。
普通の職員ならば、迷うことなく進めるであろうところが、嘘に限っては5倍の時間がかかる。
脳内に立体的な地図がないために、試行錯誤を繰り返しているのがその最たる理由である。
探している部屋はいつもの研究室。
そこの扉だけは汚れに至るまであらゆる情報が脳内に残っている。
「さがさないと」
リノリウムの廊下を蹴って今度は走り出す。
階段を上ると、防火扉がしまっている。
警報は鳴っていない。
嘘は慎重に扉を開く。
中を見渡すが、人影はない。
嘘はゆっくりと扉の中に入っていった。

続く
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