瓦礫の不在証明
第一回公式イベント
おてもさんの漫画より続きのような


ひゅうひゅうと風が鳴いている。
地面には多数の瓦礫が転げ落ちており、何か壮絶な事故を連想させる。
現にこの場は地獄のようであった。
電車の車体が線路から外れ、転倒している。
そんな殺風景の中を、これまた殺風景に似合いそうな色の無い男が歩いていた。
男の名前ははいじま涅槃、西京駅の駅員だ。
きょろきょろと周囲を見渡す様子はどこか無邪気な子供を連想させ、瓦礫の中を軽々と歩いていく姿には少しばかりの慣れも見てとれる。
「……居ませんねぇ……人間」
周囲に散らばる瓦礫を踏みつけながら、ぼそぼそと間延びした口調で呟く。
彼は救助するべき立場のはずだが、その目には獲物を探すかのような色が含まれていた。
ふと、その灰色の目が捉えたのは、散らばった紙と鞄だった。
にこりと微笑み、鞄の落ちている地点まで歩いていく。
「誰か、誰か助けて……!」
微かな声にさらに涅槃は微笑んだ。
ひょこりと大きな瓦礫の側から顔を出し、目的の人物の顔を観察するように見た。
あちらもこちらに気づいたらしく、より強く助けを求めてくる。
鞄の近くに散らばった紙をちらりと見た。
東京の文字が見えた途端に、涅槃は表情こそ変えなかったが内心沸き立つ思いだった。
「おやぁ……どうしましたぁ……?お怪我してますねぇ……」
間延びした、馬鹿にするような調子で呑気に尋ねる。
これがいつもの調子なのだから仕方はないのだが、相手を苛立たせる要因になることは想像にかたくない。
「早く、早く助けてよ!血が、血が止まらな」
「ええ、助けて差し上げますよぅ……えへ……」
少女の腕からは血がだらだらと漏れており、命の灯火がかきけされそうな事を示している。
なるべく早く終わらせないと。
涅槃は少女の足の自由を奪っている瓦礫の一部をどけると、最後の一際大きな瓦礫に手を優しく触れた。
次の瞬間には瓦礫は消えており、少女は解放される。
「さぁて……行きましょうか……?」
笑った顔は逆光でどこか不気味だった。

おわり。
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