ようやく気付いた話
悟は自分の車を追い抜いていくもうひとつの車を眺めていた。
安全運転を心がけているが、あちらはそんなことはまったく気にとめていないらしく、汚れがかなり車に付着している。
電話で先ほど話した調子だと、いつもどおり笑っている様子だった。
同じ人間から作られたもの同志だが、あちらについてはまったく理解が及ばない。
もっとも、オリジナルの涅槃についても理解はできないのだが、こちらを理解するつもりは毛頭ないため、関係ない。
「なんだかなあ」
複雑な心境を表現するように悟はぼやく。
どうにも悟にはこの作戦があまり面白く感じられない。
自分が明らかに道具として利用されている感覚があるのがその最たる原因だろうか。
自分は最高傑作だ、そういわれてきたのにこれでは話が違うではないか。
悟は歯を強くかみ締める。
悟、そういった名前とは裏腹に本人は感情の起伏がひどかった。
ある意味彼は一番の失敗作だった。
機械的に作業を進める自分にとって都合のいい人間。
涅槃が作ろうとしたのはただの人型の人形であった。
その結論に至ったとたん、悟は歯痒くなった。
もう一度歯を噛み締める。
神経から伝わる痛みがある。
自分は生きている。
その実感だけを糧に悟は自分を追い抜いた喜を追いかける。
仕事はこれっきりでやめよう。

続く
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