憂いのぼくと
憂はやる気なさげに顔を覆うマスクをとる。
奇っ怪な雰囲気を醸し出していたマスクを取れば鬱々とした表情が現れる。
憂い以外の表情をすべて削ぎ落としたような顔をしかめて、憂は瓦礫と破片にまみれた所内を見る。
惨状だが、これが自分のせいではなく、他の外的影響によるものであることが苛立ちの原因になる。
自分で出した汚れならば片付ける気にもなったろうが、他からされたこととなるととたんに面倒になる。
白衣のポケットに適当に突っ込んだスプレー缶はすでに空に近い。
怪しいと見ればすぐに使っていたのがその最たる原因だが、本人は気に留めず、その方向性を崩す気は皆無であった。
研究所内の一角、とある部屋の扉を開く。
クロゼットの中から白衣を引っ張りだし、スプレーや水で汚れた方は乱雑にかけ直す。
薬品のストックを見れば、先ほどまで使っていたスプレー缶の中身と、酸性の薬品が目に入る。
スプレー缶は金属製であり、残念ながら酸性の薬品は諦める。
研究室内を少し見渡すと、窓が開いている。
無用心だと感じながら、窓を閉じた。
少しだけ見えた外には煙が立ち上っている。
騒動は思ったより深刻らしかった。

続く
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