鉛の女
「ついていけと?」
「そうだよ」
古式はきちきちとぜんまいが動くような音を立てて首を傾げる。
機械のような目は相も変わらずに様変わりしたカメラルームの景色を反射している。
経費の計算は終わった為、手のひらに文字を書いて確認する。
「経費、薬品、薬剤処理、部品補修、ふむ」
のんびりと語る古式はひどくマイペースである。
しめていくら、と適当に口にし、その辺に置いてあった紙に金額と小計をさらさらと書き記す。
そこそこに整った文字で書かれた金額はかなりひどかったが、本人にとっては取るに足りないらしい。
「では、行きましょうか」
それまでやっていたことは取るに足りないとでも言いたげに、あっさり古式は連行に応じる。
下駄が床に生えた植物を適当に踏みつけ、座っていた椅子が少しかしぐ。
身長の低い彼女からすれば男の差し出した手は位置が高かったらしく、少し手を伸ばして引きつかむ。
機械の身体は調節があまりなされておらず、思いがけず強く手を掴むが、本人には自覚がない。
普段は歩くことがほとんど無い古式は、あらゆる人から得た統計通りに歩みを進めた。

続く
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