知らない悪意
涅槃は何とはなしに所内の階段に座り込んでいた。
あくせくと走っていく穏健派や、中立派、数人は焦っていない辺りから推察するに、現在の事の事情を知っていると見える。
顔見知りも数人走っていくが、特に話しかけることもなく眺めるだけに留める。
この研究所自体もそこそこにダメージは負っているだろうが、たかが1日そこらでは損傷の具合もたかが知れる。
至るところのカメラを破壊されたのは少々痛いかもしれないが、所内には機械を修理する能力の持ち主等が居り、取り敢えずはほとんどノーコストで持ち直しが可能だろう。
相手はこの城塞に飛び込んできた者である。
土地勘や、複雑に組まれた警備網がある限り此方が陥落することはまずない。
涅槃は異形の手を重ね合わせ、少し中空を眺める。
そもそもなぜこういった邪魔をされているのだろうか。
普段から浮かべている笑顔を少々疑問の色に染めて、涅槃は考える。
全く心当たりがない。
彼方からすれば何かあるのだろうが、此方から何かしたような記憶はほとんどない。
理不尽な自然災害のようなものか。
涅槃は勝手に自己解決し、立ち上がって歩き出す。
次はどこへ行こうか。
涅槃は宛もなく適当に歩いていく。


続く
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