紙の上の免許
喜は車を走らせていた。
アウトドア派ではないため、それほど車に乗ったことはないのだが、新しい趣味にしてもいいと思えるほどには車を楽しんでいた。
思考的には新しいおもちゃをもらった子供のようなものである。
先程から通りすがる人を容赦なく跳ねているが、本人は全く気にしていない。
自分だけが楽しいことを頭に動いている典型的なクズである。
天照の法律的に、彼が交通事故で訴訟を起こされる未来が目に見える。
永代区の研究所に戻るべく、喜はアクセルを踏む。
あまり邪魔がなく進んでいくというのも面白くはないのだが、邪魔が入ると少し苛立ってしまうのでこれくらいがちょうど良い。
悟が後から来るといった話を聞いていたのだが、今近くに居るかどうかはとるに足りない。
拝島喜は適当に生きていた。
作り手の涅槃が自分にどういった期待をしているのかは知らないが、今はこの状況で出来ることをやってしまう。
不意に電話が鳴る。
喜は車の運転を邪魔されたことに少し腹をたてるが、しぶしぶ3コール目で電話をとる。
「もしもし、喜?道に迷ってはいないんだけども」
「ああ、嘘ね、古式さんにでも聞きなよ」
ぶつりと雑に電話を切る。
髪を払って、前を見た。
日が落ちるのはまだまだ当分先だ。

続く
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