降り続く雨と憂愁の
ガスマスクの視界の悪さに憂は若干顔をしかめる。
人間的な感覚がそこそこに抜けているとはいえ、遮蔽物が目の前にあるのはどうにも気が進まないものである。
警備ロボットが異変を察知したのか、数個近づいてくる。
自分のことはてんで無視して、様子のおかしい研究員達を攻撃していく様はなんだかおかしかった。
空調の調子でも悪いのか、気温がやや高い気がする。
不快に感じた憂は少し離れようかと画策しだす。
天井を見れば、火災の時に備えて設置されたスプリンクラーがある。
先程からスプレーを撒き散らしているせいか、周囲には煙が立ち込めている。
憂は少し考えてから人混みを逸れる。
スプレーの煙は天井に達し、水がざあざあと降ってくる。
人混みにまみれたり水に濡れたくはない。
そう考えて、憂は人混みを離れていく。
少し遠くに見覚えのない研究員が走っていくのが見えた。
見覚えがない、つまりは敵であるのだが、憂は特に気にとめた様子もなく、流していく。
「所内で走るのは危険だよ」
ぼそぼそと独り言をこぼす。
そこそこの音量で語った忠告は人々の声と、ざあざあと降り続く水音に消えかけた。


続く
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