10アンペアの兄と
強い。
なかなかの手練れらしい。
楽は後退りしながら攻撃のチャンスが無いかと画策していた。
先程の身の動かし方や、明らかに重そうな装備でありながらそれを感じさせない動き。
正攻法ではどうにも勝てそうにない。
楽は頭はそれほど良くはないが、体力や体術にはそこそこの自信があった。
最も、即席で成長を促進させた体であり、一般人より強い、というだけなのだが。
元々の遺伝子を持つ涅槃自身がそれほど体力に長けた人間でなかったことが大きな原因だが、今はそういった原因考察をしている場合ではない。
楽は一つ深呼吸をして、電気棒を構える。
女が変装すらしていない辺りから、警備が掻い潜られつつあることを知覚する。
女が駆ける。
ひらりと赤い髪が翻り、素早く棒が繰り出されてくる。
避けた瞬間に次の一手が飛んでくる。
足元を正確に狙った一撃を避けきれず、楽は廊下を少し滑る。
しかと足を踏みしめる。
痛みはそれほど無い。
人間と比べて未発達な部分が多く、痛覚が鈍いのかもしれない。
骨は折れていない。
ぎゅ、と廊下を踏みつけ、楽は電気棒を女に向かって降り下ろす。
ばちばちと電流がはぜる音がする。
女は棒と棒を交差して、受け止めている。
しばしその状態で膠着していたが、女は咄嗟に力を抜き、楽はそれに気付き飛び退く。
「なかなかやるじゃねぇか……ここらでやってきた研究員共よりつええな」
女は相変わらずの口汚さで称賛を口にする。
楽はにこりと笑い、そのまま突撃する。
咄嗟のことに女は少しバランスを崩し、派手に吹っ飛ぶ。
軽い、手応えがない。
床からあっさり起き上がり、女は何やら文句を言う。
「てめぇ!せっかく褒めてやってんのになんだよ!!」
案外と子供っぽいのかもしれない。
楽は電気棒のバッテリー切れを少しだけ危惧する。
今でも大して役にはたっていないのだが、見た目の派手さがなくなればどうなるだろうか。
再び仕掛けてきた女の攻撃に吹き飛ばされながら、楽はそんなことを考えていた。

続く
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