赤と三角定理
楽は突然部屋の扉を開けられ、驚いたように目を見開く。
扉を開いた犯人はすぐさま立ち去ってしまい、誰だったのかは判別出来なかった。
ドアを閉めるついでに、廊下を見渡すが、犯人らしい人物は見当たらない。
代わりになにやら知らない人物を見かけた。
ほぼ全身を隠す黒い衣装は白い服ばかりが歩き回るこの研究所内では異質であり、靴がピアノの鍵盤を叩くように硬質な音を立てている。
金属とリノリウムの廊下がかち合い、硬い音が鳴る。
足音は規則的であり、静かな廊下にカーンと鳴り響く。
明らかに不審である。
楽はドアの後ろに置いてあった電気棒を握りしめる。
黒服はそこまで身長が高いという訳でもなく、どちらかというと女性の見た目に近い。
楽はタイミングを見計らって女の前に飛び出す。
女は即座に反応し、電気を帯びた棒をすんでのところで回避する。
少しだけ手応えがあるが、浅い。
重苦しい衣装に反して女はひらりと華麗に翻る。
「よォ……いきなり仕掛けてくるなんざ度胸あんじゃねェか」
金属と廊下のぶつかる音が彼女の足元から響く。
ひゅっ、と手に握りしめられた棒が空を切る。
楽は電気棒をバトンのように回し、白衣を適当に脱ぎ捨てる。
「ここがどこだと思ってるのかな。仕掛けてきてるのはそっちだよ」
にこりと笑った楽を女は舌打ちで一蹴した。

続く
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