υの存在意義
悟はぼんやりとしていた。
涅槃に話をしようと探してみたのだが、既に下見に出た先であるとの情報しか手に入れられなかった。
「さすがは僕のご主人ってところかなぁ。でもさすがにちょいと困っちゃうや」
本人にはあった吃り症も、遺伝子操作によって改良がなされた悟には存在しない。
そもそも生来の性質が確定した上で生み出されているのだが、彼はそのことはしらない。
試験管が故郷であり、彼の母。
はいじま涅槃によって製作された都合の良い駒、それが悟であった。
「まあ、これで僕の真価が見せられたら、行幸かなぁ」
一つ伸びをして、間延びした声で語る。
「だって僕が最高傑作なんだもの、他の僕に負けてはいられないよ」
悟には自分が最高傑作たる自信が強く存在していた。
理由はわからないが、自分は他の拝島とは違う。
それよりも優れた存在である、そういった実感があったのだ。
「証明してやるさ、僕の優秀さをね」
彼にとっては単なる騒動ではなく、自分の存在意義を探る為の事件でもあった。
「まぁ、まずは腹ごしらえかなぁ、なぁんて」
独り言もそこそこに、悟は昼時を少しだけ過ぎた食堂に向かうのだった。


続く
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