書き記すτ
古式はつまらなさげにペンを投げた。
先ほど涅槃に遭遇したのだが、どうにも忙しそうで、聞こうと思っていたことが聞けなかった。
たいしたことではないのだが、現在の古式の考えは耳に入れておかせたかったのだ。
見かけた時にあっさり去ってしまったことから、なんとなく彼も焦っているのだろうことがうかがえる。
らしくない。
先ほどから侵食され、傾いた建物の始末書に追われているのだが、"自分で考える"知能がほとんどない彼女にはどうにも時間がかかってしまう。
"引用する"知識に関しては天才的だが、彼女自身にはほとんど考える能力がない。
よって、これまでに見てきた始末書のデータを細切れにして、文法が間違っていないのかを一々確認しながら書くはめになっているのだ。
投げたペンを再び手に取り、走らせるが、すぐに修正していく。
こういった作業が根本的に向いていないのだ。
「困りました。これ、時間かかります」
笑顔の無表情が少しだけつまらなさげに歪められる。
修正液にまみれた下書きを更に修正し、今度は清書用に書き改めていく。
今度は複写であるため、古式は素早くペンを動かして行く。
複写や、記憶にあるものを引き出すことにおいては常人を遥かに越える能力があるのだ。
ペンをさらさらと走らせる音が室内に静かに響いていた。

続く
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