ρの合同
パン、と乾いた音が遠くから響く。
もう始まっていたのかと涅槃は灰色の目を細めて笑う。
まだ指定の日付ですらない、まだ大丈夫、そう、まだ。
悠長に構えているが、涅槃は材料探しに忙しかった。
殺すほどではないが、毒薬がいる。
自分にはほとんど戦闘能力はないのだから、"工夫"が必要なのだ。
「……なるべく地味に、目立たないように、ですねぇ……」
くつくつと漏れる笑い声を隠すように、涅槃は下を向いて笑う。
「はいじま涅槃、突き止めましたよ」
前方からの声を辿れば、そこには見覚えのある極彩色の少女がたたずんでいた。
涅槃はにい、と笑い、少女に聞き返す。
「いかがでしたぁ?……もう逃げてますよねぇ、これ」
どこから仕入れたのか、そういった疑問を抱きつつも、少女、荒神古式は尋ねるような野暮はしない。
だがしかし、伝達すべき情報はあるため、迷わず口を開く。
「ええ、逃げました。夜十神誣、神崎鷹廣、今追ってるそうで」
かたかたと機械が動く音が聞こえる。
いざとなったら彼女でも戦えるのではないかと錯覚するが、彼女はそもそも延命の為だけに身体を機械化しているのだった。
それに、研究所随一のデータベースたる彼女を失うのは痛い。
涅槃は古式の話を聞いている素振りを見せていたが、ほとんど耳を通り抜けていた。
「……では愚生は忙しいですのでぇ……えへ」
にこりと笑って古式の隣を通りすぎる。
二人で行動するには都合が悪いのだ。


続く
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