νの叡知
「傾斜角ややズレ」
愚痴でもこぼすように荒神古式は語る。
古式の感覚は、常人では把握しきれないような微かな歪みを感知していた。
ことは思った以上に大きいらしい。
電話を更にかける。
ダイヤルは記憶通り、これが繋がれば技師の一人に連絡が行く。
「もしもし?此方の棟、異常です。点検お願いしますね」
要件だけの簡単な電話である。
相手は承諾した様子で、すぐさま電話を切られた。
NECTER所属の研究員達は自由である。
どこまでも自分の好きなように好きな研究にのみ力を注いでいる。
どうやら古式のように他の相手の為に研究をしている者は珍しいらしく、他とは感覚が合わない。
そもそも研究者気質ではないのだ。
彼女は単なるデータベースであり、機械の少女なのだから。
「このこと、記録しないと」
そう語るも、彼女が紙の類いを取り出すようなことはない。
強力な記憶能力によって、すべての視界などが、瞬時に切り取られて保存される為である。
彼女の視界、感覚はいわば映画のフィルムであり、一編の齟齬も無く、完璧に保存がなされている。
更にそこを簡単に素早く検索できるのだ。
神のみぞ知る大百科、古式の能力はどこまでも他人向けであった。

続く
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