μの拡散
「ああ。はじまりましたかぁ」
相変わらずの間延びした口調で涅槃は語る。
その様子は落ち着いており、呑気にコーヒーでもたしなんでいそうな勢いである。
現にコーヒーを飲んでいるのだが。
「想定内ですしぃ…………準備なら入念にしてますよぉ……まあ、万が一には備えてますってぇ」
懐中電話の先の相手は相方の古式である。
対する古式も口調は落ち着いており、涅槃と同じくこのことにたいしては対策を練っていたのだろう。
「ああ、雷蔵さんにも伝えておきますねぇ…………」
ぼんやりとした様子で語るが、有無を言わせずに電話を切る。
それから、手慣れた様子でダイヤルを回し、本来あまり関係のない内閣総理大臣に向けて電波を発信する。
ツーと長い音が響き、電話がつながる。
つながる、のだが、出ない。
「…………もう一度で」
一度電話を切ってから、涅槃は電話をかけなおす。
ツーと長い音が響き、電話がつながる。
出ない。
涅槃は電話を床に叩きつけたい気持ちを抑えつつ、あきらめた。
「どうしようもないですねぇ、あの方…………」
本日何度目かのため息を尽き、涅槃はコーヒーに口をつけた。
ぬるくてどうにも不味かった。

続く
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