走り抜けるι
荒神古式はぼんやりと虚空を眺めていた。
特に特定ができているわけでもなく、未だに情報が錯綜しているのだ。
解像度の低い職員パス、木箱、過激派、ぐるぐると脳内をめぐる情報を整理することなく、古式は歩いていく。
先程軽いメンテナンスをしたため、機械の体は軋むことなく滑らかに動いている。
夜十神誣のその後の動向も図りかねる。
どうにも分が悪い。
下駄の下に張り付けてあるフェルトの影響で足音は極限までしない。
体内の機構を維持するための機械も現在は糖分の伝達をそれほど必要としていないため、あまり活発には動いていない。
白い廊下を歩いているうちに、迷ったような気持ちになってくるが、古式はそもそもその記憶力によって一度通った道で迷うようなことはない。
この建物の構造は奇妙で、外から見たときと中から見たときの階数が異なっている。
更に似たような道がいくつも続き、産業スパイ等を防ぐ処置がなされている。
もっとも、この構造で一番困るのは、うっかりやの研究者が自分の研究室を間違えたりすることなのだが。
と、古式がぼんやりと考えを巡らせていると、前方から走ってくる者がいた。
「拝島喜、廊下走らない」
丁寧でもなんでもない口調で指摘すると喜はぴたりと止まった。
「だってさー、ちょっといそいでんだもん。走ったっていいじゃん」
そう言い放つと、喜は走り去っていった。
道に迷っているのかどうかは図りかねるが、どうにも嫌な予感がする。
古式は廊下をじっと見ていた。

続く
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