θの悟り
「……悟」
悟は呑気に一人でオセロをしていた。
やはりこいつには緊張感というものが欠落しているらしい。
自作のクローンとしては最高傑作たる彼だが、どうにもこういったところが非人間的だと感じてしまう。
名前を呼べば、手で此方を制し、更にオセロに没頭する。
なんともはた迷惑だが、こういう風に作ったのだから仕方がない。
「……憂の話は聞きましたかぁ……?」
「聞いたよ」
そっけなく返事を返される。
まともに話を聞いてくれるのはこいつ以外にはほとんど居ない。
気紛れに作りすぎただろうか。
盤の上でオセロの駒が白と黒に入れ替わり立ち代わりする。
このゲームのことは心底好きだが、今はそんな気分ではない。
「……頼まれ事、してくれますよねぇ」
「いいよ、いくらでも」
それまで白が劣勢だった盤面は、一気に黒が征していく。
一発逆転が好きなところも自分によく似ている。
ただひとつ大きく異なるのは、彼の髪型がただのロングヘアーであるところや、手が普通であるところか。
「……それはよかったですぅ……」
ぼそぼそと語る声は少し明るいトーンを持っていた。
これから始まる、戦闘を楽しむような素振りだった。

続く
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