オーダー
真っ青になりながら私は秩序を執拗に守ろうとした。
先ほどから此方に向かって群がってくる民衆が嫌で仕方が無い。
人々は手にさまざまな武器を持って、私の管理するこの像を壊そうと画策する。
像に向かってペイントボールを投げつけられ、鼻持ちならない臭気が鼻を突く。
ああ嫌だ嫌だ。
あんな選ばれなかった塵芥のような人間に私が苛まれなくてはならないだなんて!
大きな像を修繕出来る能力を持つ者は、この世紀末の西京に於いては私と、その他数人位しか居ない。
建物を元の状態に戻す能力に関しては私が一族の中では一番強く、そのことを買われて私は荒神についている。
真っ青なインクが像に向かってぶちまけられ、インクをひっかぶった周りの人々が、インクを投げた本人に向かって殺到する。
私は高台からその様子を眺め、くすくすと声をあげて笑った。
荒神のような寄せ集めがどうのだとかと此方を罵ってきたところで、彼らとて一枚岩ではないのだ。
そのことを再確認し、私は像をしっかりと見据えた。
銃弾や、車の突進によって新品同様だった像はかなり汚れ、そして欠けてしまっている。
しかし慌てる必要は無い。
私がこの像を常に治し続けることを要求されているからだ。
他でもない私ならばこの像を元の通りに、一瞬で戻すことが出来る。
周囲に人が群がってる今やるのでは意味がない。
私は意識を集中させ、周囲の人々を蹴散らしてくれる存在を心待にした。
数分後、バイクの低い唸り声を響かせながら、荒神のバイクが像の近くに止まった。
直後に響き渡る剣が翻る音。
救援が来てくれたらしい。
私は少し安心し、像に向かって手を伸ばす。
意識を像の中心一点に集中させ、元々の荒神雷蔵の姿を再現していく。
ペイントボールの臭気は消え失せ、真っ青のインクはどろりと溶けて消えた。
私は一仕事終え、疲れきってしまい、少しばかりの微睡みに沈んだ。
しかし数分後、私は像の壊れる音を聞き、終わることのないいたちごっこに頭を抱えることとなるのだった。
私は秩序を守ろうとしている。

終わり
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