「君の前じゃなぜだか格好よく居られないし、気がつけば君のことばかり考えている僕はとてもださいし、君のそういうところがとてもいやだ」
やつは一息にそう言うと、大変不服そうに、ゆっくりと金色の瞳をこちらに向けた。珍しいことにいつもの穏やかさはそこにはない。こいつは何を言っているんだ。何故そのような状態に陥るのか、その問に対する答えを俺はひとつしか知らないし、俺でも知っている答えがひとつだけある。実に馬鹿げている。他人様に対しての余計な気遣いはし過ぎなほどにする癖に、自分に気を回すことは出来ないのか。自覚がないのか。格好良く生きていきたいということに頭を占められすぎなのではないか。腹立たしいこと極まりないな。どれも言葉としてくちびるを震わすことこそなかったが、その思いのどれもがひとつの確信の下に生まれたのは確かなことであった。こいつは、俺のことが好きなんだ。こちらこそ大変不服である。不服の極みだ。こいつが俺に対する恋心を自覚していないことに腹を立てている自分に対して。その恋心に気が付いて欲しい自分に、気が付いてしまったことに対して。

どっちもどっち(光忠くんと長谷部くん)
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