※会話文



宜野座と征陸

「すまねえな伸元、あんな場面を見せちまって」
「……」
「あいつには……元妻には、情はある。だが愛情じゃない。いまさら愛だの何だの言ったって今更だし、迷惑だろうさ」
「……ああ」
「伸元、俺のことはどう思ってもいい。だが嬢ちゃんには何も向けないでくれるか」
「無理だな」
「……そうだな」
「あれは苗字も悪い。あんなことをされたら、拒否すら出来なくなる」
「伸元……」
「せいぜい潜在犯同士、傷を舐めあえばいい。俺には関係ない」
「そうかい……ありがとよ」



名前と征陸

「あんなことを言ったあとに何だが、嬢ちゃんに言っておかなきゃならないことがある」
「はい」
「俺たちは潜在犯だ。結婚はできるが、手続きが面倒らしい」
「はい」
「子供は絶対に作らない。結婚もしない。──こんな男だ。本当にいいのか?」
「征陸さんがいいんです。今まで付き合ったこともないから結婚なんてしないと思ってたし、子供も……親がこんなことをしてる環境で育ったらどうなるか、考えたくないですから」
「──そうか」
「ずっと……好きな人に好きになってもらえることはないと、思っていたんです。だから幸せです。ずっと恋人でいましょうね」
「……ああ」



縢と征陸

「とっつぁん、あれからどうよ!名前ちゃんは幸せオーラ振りまいてるし、良かったじゃん」
「まさかこの年になって恋愛をするとはなぁ」
「年なんか関係ねえって。で、どこまでいったの?名前ちゃんは手を握ってもらったって浮かれてるけど。二週間くらい」
「それくらいしかしてないさ。──嬢ちゃんを見てると、どうも手が出せなくてなぁ」
「あー……わかるわ。恋愛してこなかったから疎いし鈍いし隙はあるし」
「知らんうちに知り合いも増えてるしな」
「でもさぁ俺、ずっと名前ちゃんのほうがベタ惚れだと思ってたよ。ゆるやかにとっつぁんを好きになってく名前ちゃんと違って、とっつぁんって落とし穴にハマったみたいに一気に好きになってくだろ?枷が外れたからブレーキきかないっつーか」
「……あの言動が、汚れきった俺には眩しくてな。年甲斐がないってのはわかってるが」
「別に、いいんじゃない?俺は応援してる」
「ありがとよ」



宜野座と名前

「……その後はどうだ」
「はい?何がですか?」
「執行官同士傷を舐め合っているのを愛だの恋だのと勘違いしている行為のことだ」
「ああ、征陸さんですか。特に変わらないですよ?一緒にご飯食べて、いつも私が寝ちゃって、気付いたらベッドにいます」
「……ベッド?」
「征陸さんはソファですけど。いい加減申し訳なさすぎてどうしたらいいか……」
「知らん。……結婚はしないのか」
「しませんよ。征陸さんの家族は、今でも元奥さんとお子さんのことです。私じゃありません。──なんて、結婚を夢見たりは……するんですけどね。征陸さんと一緒にいられるだけで、じゅうぶんです」
「……苗字」
「はい」
「仮に結婚をしたとしても、息子は気にしないだろう。昔に離婚した親をどうこう言うほど、息子も暇ではないはずだ」
「ありがとう、ございます」
「くだらん話をした。忘れろ」
「忘れません」
「苗字……!」
「忘れません」



ガールズトーク

「さあて名前ちゃん、今日はたっぷり吐いてもらうわよ」
「唐之杜さん、怖いです」
「なんてったって私たちに冨士崎が好きだって嘘をついてたんだもの」
「すみません……」
「まあわかってたけど」
「わかってたんですか!?」
「連絡さえ取れない状態なんだから、すぐわかるわよ。弥生も気付いてたし」
「六合塚さんまで気付いてたんですか……」
「私は最初は気付きませんでしたけど、途中で何かおかしいなって……でも良かったですね、両思いになれて!」
「ありがとう、常守さん!」
「話がまとまったところで……今までのいきさつをすべて話してもらいましょうか。弥生」
「はい、お酒」
「今日はぱーっと飲みましょう!苗字さんが話してくれるまで!」
「ええ!?」



狡噛と名前

「それで結局全部吐かされたってわけか」
「はい……途中から記憶がないんですけど、征陸さんの好きなところを延々と答えていたらしく……死にたい」
「死んだらとっつぁんが悲しむぞ」
「そうですかね……」
「苗字は知らないだろうが、前に婦女暴行を重ねてきた男に襲われかけた事件を覚えているか?人質と苗字を交換した」
「はい、覚えてます」
「とっつぁんはな、突っ走る俺や縢を後ろからサポートしてくれる。自分から前に出ることはほとんどない。それなのにあの時は前に出てな……すぐに建物に入ったのに気配がない、隠し部屋か何かが近くにあるかもしれないって怒濤の勢いで探して、あとは苗字の知っている通りだ」
「征陸さんが……」
「苗字が過去に戻ったあとも、出来るだけ態度には出さないようにしてたが、かなり落ち込んでいた。──もうすこし、とっつぁんを信じてやれよ」
「──はい。ありがとうございます」



征陸と名前

「そうだ征陸さん、すこし前なんですけど、宜野座さんが征陸さんの結婚について言ってましたよ」
「監視官が?」
「征陸さんの息子からしてみれば、結婚しても構わないんじゃないかって。宜野座さんって優しいですよね」
「──ああ。そうだな」
「今の、結婚したいって意味じゃないですから。さあて、今日は餃子ですよ!明日は二人とも休みだし、思いきり食べましょう!」


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