「あれ?名前さん、シャンプー変えました?」



竜持くんがそう言ったのは、名前さんと話してすぐのことだった。
いやな、風が吹いて気付いたとかだったら気にせんで?でもな、いま風吹いてないやん。名前さんと挨拶しただけやん。「おはようございます名前さん、今日も暑いのに練習に来てくれたんですね」「もちろん!もうすぐスペインだし!」っちゅう会話しただけやん。アンタの鼻は犬並みか?ザックだってそんなんよう気付けへんで。



「うん、前のがなくなったから新しいのにしてみたの。日差しで髪が傷んだみたいで」



名前さんも普通に受け答えしとるし。ちゃうで、そこは「そんなんすぐ気付くなんてアンタは犬か!」ってツッコミ入れるか「キモい」って一刀両断するところやで。ああもう、見てみい竜持くんのデレっとした顔。



「初めて使ったけど結構いいみたい」
「それは良かったですねえ」



……ああそっか、なんで名前さんが竜持くんみたいな嫌味なやつと一緒におれるかわからへんかったけど、名前さんがすこし抜けてるんやな。いろいろ考えてる竜持くんとそこでバランス取れてるわけや。



「いい香りです。名前さんに合っていますよ」
「あ、ありがとう」
「うちの家でお風呂に入ったあとの香りが一番好きですけどね」
「竜持くん家は高いの使ってるもんね。髪がさらさらになるもの」
「あとは僕のボディクリームもありますし」
「あれもいいにおいがして好きだけど……竜持くんがいきなり使い始めたからすこし驚いたよ」
「自分の肌とか気にしてなかったんですけど、せっかく名前さんとお揃いのものをつけているんですから。すこしは気を遣わないと、ね?」



うわっ竜持くん上機嫌やん。ウインクまでしとるし。名前さんも名前さんで赤くなっとるし、ただでさえ暑いのにやめてほしいわ。
ああー……凰壮くんまでうちと同じような顔しとる。あれ家でも見せ付けられるんやろ?精神でも鍛えとるんやろか。



「だからうちに来たらお揃いの香りになりますよ」
「え?あっ……」
「すこしだけ名前さんを独り占めですね」



少しっちゅうか、めっちゃ独り占めしとるけどな。絶対わかってて言うてるやろあれ。名前さんもまた赤くなって確かに可愛らしいけど、もうぶっちゃけるわ。竜持くんの罠にはまってるようにしか見えへん。



「じゃあ今度、私にも竜持くんを独り占めさせてほしい、な……。その、一秒でいいから」
「──ずっと、僕を独占してますよ」



やっぱ訂正。あれ惚気けてるだけや。竜持くんの性格が悪いからそう見えるだけであって、凰壮くんも虎太くんも何も言わへんし。
ああもう、なんだか悲しくなってきたわ。私だって竜持くんと名前さんみたいになりたいわけやない、けど……その、憧れみたいな人はいるわけやし。どうにか話しかけてみよか。まずは挨拶から──あっゴン様!



「お、おはよう!」


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