ボツ小説供養 40万hit01の話
致命的なミスを二連発馬鹿みたいな話をここで供養
面白いけど面白くない、名前変換もないのでお気をつけて…。
「蘭乃さん。」
赤司くんが助けろという目で見てくる。
『はい、ごめん。』
ボーッとしていた。
慌ててピザカッターを握る。
脱出が終わったあと、どんな手軽な夕食を作るかという今吉さんと私の話し合いに入ってきたのは赤司くんだった。
「出前じゃないんですか?」
確かに前回はマジバかコンビニだった。
今回こそは何か作ってもいいんじゃないかと話していたけど火神はいないしどうしたもんだかと思っていたら。
「ピザ食いてぇ。」
「いいっスね!」
「お腹空いて死んでしまいそうです。」
青峰と黄瀬くんと黒子くんがそう言って、ピザの宅配が決定した。
で、どうやら大量に届いたピザは切られていないタイプだったらしい。
赤司くんがピザカッターを渡してきた。
あんまり自信ないんだけど。
『赤司くん、これ何等分すればいいの?』
「八等分くらいにしましょう。」
『八等分ってことはさ、』
十字に切ってから二等分か。
四分の一かける二分の一で八分の一だもんね、合ってるよね私。
「大丈夫ですよ。向こうは氷室さんが包丁で切るらしいですしね。」
赤司くんが楽しそうだ。
疲れすぎてて頭が働かないんだよ、許してね。
円形の刃をピザに突き刺す。歪む気しかしない。
『ねえ、赤司くんがやったほうがいいと思うけど。』
今度は私が助けを求める目で赤司くんを見た時、後ろに誰かが立った。
背中に手を添えられる。
もう、近いな和成。
赤司くんが私の後ろをチラリと見た。
こっちはピザを切るのに集中してるんだから触らないで。
『もー和成鬱陶しい。どっか行って、邪魔!』
なぜか、赤司くんが息を呑んだ。
いや和成と私はいつもこんなもんだから。向こうも戯れに邪魔とか嫌いとか叫んでるし。
『赤司くん、ここ抑えとい…て…?』
私はここでやっと異変に気がついた。
静まり返っている。
何が起こったのか分からなくて、すがるように赤司くんを見つめるも、彼は口の端を震わせているだけ。
え、なになに、私何も気づかなかったんだけど。なんかあった?
でも赤司くんの向こう側で包丁を手にした和成が目をまん丸にして私を見ているから…私が何かした?
……ちょっと待って、和成だって?
じゃあ今、私の背中に手を置いてるのは誰。
「んだよこの空気。」
真後ろから聞こえた声に飛び上がった。
一寸早く、危機を察した赤司くんが私の手から素早くかつ優しくピザカッターを取り上げる。
そして振り返った私の目には。
申し訳ないけど、目に飛び込んできた眉毛に一番驚いた。
『ひゃ、ま、っはなみゃ、な、う、っ』
「いや、ビビりすぎだろ。」
『眉毛、太すぎ…っ!』
「な、はァア?!」
やってしまった、今度こそ!
「ぶっ、んっ、…っ、あひゃひゃひゃひゃ、んぅぇ…!」
「汚いのだよ高尾!!」
和成の死にそうな笑い声に緑間くんが怒声を放ったのを皮切りに、広いリビングに音が戻る。
背後からなんだあれ、眉毛のこと気にしてたのか、ぶっちゃけ眉毛のせいでマイナス点っす、なんてとんでもない悪口が聞こえてくる。
『待って、あの、本当に申し訳ありません。土下座します。』
私はその場に崩れ落ちた。
どうやら仲裁をしようと思ったらしい、原とコガが走ってくる。
「まーまー花宮、これを機に眉毛のこと話し合えるよ。」
「いやぁ、うちの湧がすんません!たまに口が滑るんだよね〜!」
原に関しては完全に火に油を注ぎにきた形だ。
いそいそと正座をした私の頭を花宮が乱雑に撫でてくる。
「眉毛がなんだって?」
『だって目に飛び込んできたんだもん…びっくりして…。』
「さすがの俺もなァ、眉毛にビビられたのは初めてだわ。」
『ごめんなさい。』
赤司くんのお家の床に座り込んで項垂れる私の前に花宮がしゃがんでくる。
頭を撫でられたかと思ったら、そのまま後頭部を掴まれて目の前の彼の顔を見るしかなくなる。
花宮は前髪をサッとかきあげた。
魅力的な顔だとは思う。
少なくとも私には魅力的に見える。
でも、眉毛。
眉毛…これ生えてんのか…。
『んっ、ぐふっ…んんっ、ゴホッ』
「別に俺のこと嫌いなら別れてくれてもいいんだぞ?正直に言えよ。」
にっこりと微笑んだ花宮がそう言う。
「花宮さん、ピザ切ってくれません?」
赤司くんが声をかけた。
「今いいとこなんだよ邪魔すんな。」
「良いところには見えませんが。恋人の弱みを握りたいのですか?」
「まあまあ、ほら蘭乃立ち?恋人やからって全部好きじゃなくてええんやで。」
ごもっともな今吉さんの言葉。
今吉さんが差し出した手を掴もうとしたら、花宮が今吉さんの手を弾いた。
うっ、今吉さんがそこそこ怖い顔した…。
「湧ー!」
冷え切った空間に突っ込んできたのは和成。
彼はひょいっと現れた和成は、今吉さんが花宮に弾かれて中途半端に伸ばしたままになっていた腕の下を通って私に抱きついてきた。
『和成っ…。』
「虐めないでくださいよ、俺のねーちゃんっすよ!」
あからさまに可愛らしい弟のフリをしてみせる和成に、花宮もここまでされたら何も言えないといったところか。
「ばか困らせんじゃねーよ高尾!」
ピザの乗った大皿を持った宮地さんが来る。
「蘭乃さん、早く食べないと青峰くんに全部取られてしまいますよ。」
「ほら、蘭乃さんシーフードピザ食べない?女の子はシーフード好きだろ?」
「森山…。」
「森山ほんっと、森山だな。」
今吉さんと宮地さんがため息をついた。
『シーフードピザ好きですよ、食べましょう森山さん。』
「ほら来た!よし、立って!」
森山さんが伸ばした手に飛びつく。
「疲れたら俺のところおいでよ?」
バチン、と綺麗にウインクを決めてみせた森山さんに思わず笑ってしまう。
こういう楽しい人って素敵だな。
森山さんからの本気の愛を勝ち得た子は幸せなんだろう。
そうは思うんだけど。
『花宮、お腹すいたね。』
振り返ったら、花宮は展開の軽さと速さにうんざりして立ち尽くしていた。
「…まぁな。」
『ほら、食べよう。』
手を伸ばしたところで掴んでくれなかったらどうしようと心配したけど、ちゃんと手を取ってくれる。
…続きはない。ここで死んだ。
*
40hitの01は個人的にはかなり良かったなと思っています。番外編もとても多いので別に必要のない話もいくつかありますが、これはIFでも書いた意味があったなと思います。
二人の性格が脱出の時と真逆です。
悩んでいたヒロインに代わって花宮が悩みつつも絆されていって。自分の感情に疑問を持たず受け入れた花宮に代わってヒロインは割とノリノリで進んでしまえと思っている。コメントにもありましたが、二人が恋の駆け引きを楽しんでいる感じもあって、脱出の二人がどこまで手を出していいのか探り探り進んでいたの比べると真逆だなと思います。脱出の二人の恐る恐るやってる様子は合宿でもまた書いていこうと思うので、色々と並行してて進度は遅いですが、気長に待って頂けたらなと思います。
個人的なことですが、卒論と就職試験があって(看護や教育系ではないと言っておきます)忙しさで死にかけてますが創作だけは元気にやってます。毎日花宮のこと考えてます。もう習慣になってしまいました。まだまだ続けるのでこれからも是非見守っていて下さい。
.
Comment:0