同性だからとか、非生産的だからとか、報われない恋愛だからとか、取ってつけたようなそんな言葉はいらなかった。
何で出逢ったのかなんて誰にもわからなくて、神様だってきっと、わからないことだと思う。
全て偶然で成り立っている。80年後の世界にいるあいつと出逢ったのは偶然。だけど
奇跡であり、必然でもあると思う。
敵だったのに恋に落ちるとか、普通に考えてありえないと思ってた。でも奇跡が存在するのなら。
そう思うと胸が締め付けられそうで、苦しくなった。
「綱海、条介」
「なに」
真っ青な空の下で寝転んでいると、上からバタップがこちらを覗き込むようにして見ている。
いつもの気品のよく、絶対的な自信を含んでいる顔は暗くてよく見えないが、少し違う気がした。
「・・・誰かが私たちに対してどうこう言っているのは知っている。しかし、綱・・・条介、私は誰かに何を言われようとお前と離れるつもりなど生憎ない」
さて、どうする?と言いたげな顔で、しかし憂いを帯びた顔で質問してくるバタップ
そんな顔は見たくないのだが、仕方ない。今さっき別れ話のようなものを持ち出したのだから。
しかし、そんな顔で別れたくないと遠回しに言われたら離したくなくなる。本音を言えば別れたくない。
「俺だって、離したくねえよぉ・・・でもよぉ、世間は俺たちを良いと思ってねえみたいでよ。こんな辛い思いをするのは俺だけで十分なんだよ」
真っ直ぐなバタップの瞳を見つめていたが涙が溢れそうになり、背中を向ける。
ず、と鼻をすすり溢れる涙を拭いていると頭に暖かな温度が降り注いできた
「お前だけに辛い思いなどさせない。世間など関係ない。堂々としてればいい、今まで通り。お前には私がいて、私にはお前がいる。何も怖くないだろ?」
「っ・・・ああ、そうだよな。お前が居れば何も怖くねーよ・・・」
そう呟いてそっと差し出された手を取り、目の前に広がる大海原へと飛び込んだ。
「二人で誰もいない世界で生きよう」
:さよなら、世界:
(何が正しくて、何が間違っているのかもうこの世界は教えてはくれない)