みっかめその村に住む人は動物が大好きでした。
賢い犬や愛らしい猫、美しい鳥。
誰もがそういった生き物を愛しい友であり隣人として、常に共にいたのです。

その村に猫のお面を頭に乗せた女の子がおりました。
母親からもらったマフラーをひらひらとさせながら、いつも猫と遊んでおりました。
村人が生き物たちを愛すように、生き物たちもまた、村人のことを愛していたのです。

子供たちの間にはとある噂話がありました。
恐ろしい黒い森の向こうには、素敵な動物たちの国があるのだとか。
そんな夢が詰まった素敵な噂話がありました。
「そんな素敵な国に行ってみたいな」
「どうやったらいけるんだろう」
「どんなところなんだろう」
「きっと暖かくて楽しいところに決まってる」
「行きたいな、行きたいなぁ」
子供たちは森の向こうのことで頭がいっぱい!
どんなところ?どうやったらいけるの?
動物たちと遊びながら、子供たちは興味津々。
そんな時、子供たちは見つけたのです。
くるりと巻いたしっぽに、ランタンを引っ掛けた猫の姿を。

どこかへすたこらと歩いていく不思議な猫の姿を!

女の子はすぐに、誰かが言っていたことを思い出しました。
「幸せいっぱいすてきな世界があるんだよ。ランタンをもった不思議な猫についていくと、いけるんだ」と。
ランタンを持っている猫なんてほかにいるはずもありませんし、ましてやきらきらと輝く首輪をしている猫なんてもっと珍しいのです。
宝石の煌く首輪なんて、見たこともありませんでした。
きっとあの猫が案内をしてくれるに違いありません!
そんな素敵なものをたくさん身につけているあの猫こそ、自分たちの知らない森の向こうからやってきた猫に間違いない!
女の子はそう言いました。

「ねこさんまって!」
「ねこさん、ねこさん!」
「どこへいくの、ふしぎなねこさん!」

子供たちがその猫にそう聞きました。
一度だけ立ち止まった猫が、にゃあおと鳴くと、尻尾のランタンにぽうっと青い炎が灯ります。
見たこともない、綺麗な青い色の明かり。
子供たちは、やはりあの猫は見知らぬ場所から来た特別な猫だ!……と確信しました。

猫はもう一度にゃぉ、と鳴くと、すたすたと歩き始めてしまいます。
子供たちは一度顔を見合わせてからその猫を追いかけます。
何人かの子供たちは、早く帰らないと怒られちゃうとおうちに帰っていきました。
もう何人かの子供たちも不安そうな顔をしましたが、猫が何処へ行くのかをどうしても見たかったので、猫についていくことに決めました。


とことことことこ。長いこと猫の後ろ姿を追いかけました。
日が沈み、暗くなってしまっても、怖いことなんてちっともありませんでした。
視線の先には周りをぼんやりと照らしてくれる青い炎があったからです。
子供たちが疲れて、少し歩みが遅くなれば、猫も時折立ち止まったりしながら、ずっとずっと歩いていきます。
時々、夜の暗い部分になにか怖いものを見てしまうような気がしましたが、その度にまるで大丈夫だというかのように猫が鳴いてくれるので、これもまた怖くはありませんでした。


いつの間にか、女の子たちは村から出て、どこか知らない場所を歩いていることに気がつきます。
ランタンに照らされる周りは緑でいっぱい。
いつの間にか、禁じられていた黒い森の中へと入ってしまっていたのです。
恐ろしくて足取りが重くなった彼女たちですが、ゆらゆらと揺れる灯りはどんどんと森の奥へ奥へと歩いて行ってしまいます。
だんだんと周りが暗くなってしまうのに我慢が出来ず、女の子たちは猫を追いかけるよりほかにありませんでした。
しかし、それも少しのあいだのこと。
黒い森の遠くに、ほんのりと青い光が見えたのです!

「あ!なにかが見えるわ!」
「本当!あれはなんのあかりかな」
「きっと、素敵な国に間違いないわ!」

女の子たちは走り出しました。
猫も負けじと軽快な足取りで明るいところへ向かって走っていきます。
綺麗な青く光る森を通り抜けたその先には、たくさんの動物たちがいるではありませんか!

「すごい!すごい!」
「動物さんがたくさん!」
「猫さん猫さん、連れてきてくれてありがとう!」

女の子たちは大喜び!猫も一緒に、大喜び!
動物たちも、女の子たちを取り囲んでこう言いました。
「ようこそ、お嬢さん。ようこそ、僕たちの楽園へ」
その手をとって、みんなみぃんな、どこかへと歩き出しました。


……そうして、動物たちの幸せの国へとやってきた女の子たち。
その後二度と村へ帰ることはありませんでしたとさ。


めでたしめでたし
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