困惑した現実

決して綺麗だとは言えない文字、上手いとは言えない絵をすらすらと書いていくリヴァイ。書かれるモノを見てはいるもののそれは理解できないものばかりで
何も聞かず、ただこいつが書き終わるのを待った

「大体の図はこんな感じだ」

「………」

書かれたものを受け取りじっと眺めるも理解出来ない。ここは文化が入り交じっているのだろうか
先程の朽ち始めている本にしろこいつの文字にしろ見たことがないもので、しかしながら本棚にあった一冊の本に関してだけは読めるものだった

「…文字、か。……初めて見る」

「は?」

「おれはこんな文字など見たことがない。お前たちはこれを使うのか?」

「当たり前だ。…じゃあ、今何語喋って…」

「これだ」

こいつが風呂に入っている間読んでいた一冊の書物を渡す。ここではあり得ない、こちらの世界の全て
パラリと頁を捲るリヴァイだが、全く理解出来なかったのかすぐに本を閉じた

「…理解できねェ」

「だろうな」

だとしたら何故会話を交じわすことが出来る。おれは言葉を変えたはずがないし、それはリヴァイも同じ。始めからお互いの言うことは理解できた
ならば原因はあの青白い光、か
まぁいい

「図だけあれば十分だ。一旦地上に出てみるか」

「ロードって、わけわかんねェ」

「おれもお前が理解できねェんだよ。それに、この空間もな」

「?」

この家から出て気づいたが、ここは妙だ。家の中は綺麗で全ての設備が整っているにも関わらず外観は周りの建物と変わらぬもので。おれに、この建物…、何か関係しているのか。

ー何か異端なことが起こる時に周りにもその影響が及ぶ、それには必ず意味がある

そんな言葉を信条にした本を昔どこかで見たことがある。それが本当ならばおれがここにいる意味は一体なんだというのだろうか。分からないし検討もつかない

「……はぁ」

「?」

本当、嫌になる。何れだけ悩まされれば気がすむのだろうか

「……馬鹿馬鹿しい」

途中で考えることの無意味さに気が付き呟いた言葉は想像以上に大きく響いた。そんなこと今はどうでもいい
一つまた一つと浮かんでくる考えを、そちらに向きそうになる思考回路を強制的に遮断すべく外に出るため、椅子から重い腰を上げ立て掛けておいた長刀に手を伸ばした

「出る…のか?」

じっと見てくるリヴァイにそうだと告げればおれも行くと一言
食材もないし丁度いい。商人辺りを狙って必要なぶんだけ奪ってくるか


「行くぞ」

「(コクリ)」

リヴァイを連れ外に出ると様々な視線が突き刺さる上、人も多い。スタスタ歩いていくおれに必死についてこようとするリヴァイだが、時折人の波にのまれ見えなくなってはおれが足を止め、見えなくなっては止めの繰り返しにい嫌気がさす
餓鬼は面倒だ
おれの隣に戻ってきたリヴァイの手を掴むと目を見開かれ凝視された

「迷子にでもなられたら面倒だ」

「………」

おれから目を離し伏くリヴァイに小さく笑い足を進める。素直じゃないこのガキの言葉を受け取っておくことにした


(「…ありがとう」)
(耳を赤くして紡がれた生意気な君からの御礼)



back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -