光の先の世界

心地よい風が吹き天気もよかった。そんな中、船縁に腰を下ろし本を読むのはいつものことで
ドレスローザへ向かう道中、麦わらと鼻とトナカイは釣りをしながらわいわい騒ぐ声が聞こえる。なにも起こらない中に小さな不安を感じた

そうして読書を初めて1時間もたたない頃だった。ふと目の端にちらりと過った淡い光

「………」

面倒ながらも本から目を離して顔をあげれば想定外の物体に唖然とした。
ふわりと目線の高さで浮遊している青白い光

「…………」

声をかけるな視界に入るな存在するな。これはおれがこの船に乗り込む前に全員にいった言葉で
今は船尾に一人邪魔されることなくいるため周りには誰もいない、それ故に幸か不幸かこの光を見ているのはおれだけだ。
気にもかけず読書をしようとしたもののこれが能力者の能力によるものなら放っておくわけにもいかず、読んでいた本をパタンと閉じると重い腰を上げた

「………」

横にかけておいた愛刀を手に取り鞘から抜いてから試しに振るってみるもなんの変化もない。しゃっと音をたてながら鞘へと仕舞ってから左手で持ち、右手を淡い光を放つそれに伸ばした

「ロード、黒足屋がお前を…」

ローの声が聞こえるが、おれの意識は徐々に消えつつある右腕へと向けられ返答すらしなかった。いや、出来なかった。声を発することすら叶わなかったのだから
それからは全てが一瞬で。気づいたらなんて言葉を使うのも馬鹿馬鹿しいけれど。言葉通り、気がついたら見たことのない家の中に存在していた。取り合えず麦わらの船ではないことは確かで。窓の外にある風景は過去を振り返ってみても見覚えはなかった。となるとまんまと敵の策略にはまったってわけか…、無償に苛立ちを感じながらも家の中のものを物色することにした。しかし、手がかりになるものは何もなくおいてあった今にも朽ちそうな本の文字をおれは理解することができない

「………」

ここにいては何も分からない。生活感のないその家から外へと出ると周りには目付きの悪いゴロツキ、今にも死にそうな痩せこけた人間。まともだと思われるものはひとりもいない
物騒なところへ来たものだ、周りの奇妙なものを見る目など気にも止めず足を進める
何かあるとしたら裏路地か。そう思い、そちらはと足を向けると視界に映るボロボロの子供が一人壁に寄りかかり蹲っていた。傷だらけの子供の手には肉と野菜

「…………」

放っておけばいい
しかし、それをしようとしない自分を小さく嘲笑い子供を抱えあの家へと踵を返した


(再びあの光が現れないだろうか)
(意味のない希望を抱くことはしなかった)



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