体に染み付いた感覚

何も変化がない中はや数ヵ月。
青白い光は現れることなく、ここに来て変わらぬ毎日を過ごしている。変わったと言えばリヴァイ、か
あいつはおれに完全になつき、何処かへ行く度に後ろをとてとてとついてくる。そんなにおれのことが好きか、一度だけ問うと、顔を赤くして悪いかっ!!と言ってきたのを今でも鮮明に覚えている

「…んな、ブスくれてんじゃねェ。すぐに帰ってくる」

「ならおれも連れていけ」

「お前がいると面倒だ。今日は独りにさせろ」

「……」

ふて腐れたようでおれと視線を合わせようとしないリヴァイを一瞥し、構うことなく外へ出ようとするとか細く聞こえた声にその足を止める
振り返ると一瞬交わった視線すら反らされる。代わりに紡がれた言葉に頬を緩めた

「…いって、らっしゃい」

「あぁ、行ってくる」

パタリと閉めた扉、そして同時に感じる視線に顔をしかめる。見られている、それは好機のモノでも奇妙なモノでもない…何かを狙う視線そしておれへの殺気。やつらの狙いはリヴァイ、か
ここら一帯は人身売買の頻度が高いらしく貴族に売れそうな子供を拐っては売りさばき金にする。確かにリヴァイは性格に難あれど顔は綺麗だ。貴族にはそれは高く売れるだろう

「……」

ここで下手に動いては意味がない、相手を泳がすだけ泳がし、後で引き裂けばいいだけの話。だから、男の視線など無いものとした
自分の都合のいいように。向こうがこちらのものに手を出すとするならおれも奪い取ろう、何から何まで
例えば…、そいつらの心臓とか

「…フフッ」

懐かしい感覚に口角が上がる。そうだ、今までが平和すぎた
盗みはすれど戦うことも、海軍から逃げることもない世界。おれには刺激が無さすぎる
まさか、おれが海賊など微塵も思ってはいないだろう。なんせ、ここの人間たちは海の存在を知らない…、それは壁外のさらに遠くに存在する。巨人が支配するという壁外に…

「地下街のゴロツキと海賊…どちらが残酷なんだろうな」

リヴァイには悪いが相手の出方を窺わせてもらう。何、心配する必要はない。取られたら取り返す、どんな手段を使っても
それが相手の生命を奪おうとも…

帽子を深く被り地上への道を進んだ時気配が動いた気がした








「…やはりな」

あいつらの狙いはリヴァイであっていたようだ。用を済ませ家に帰ったのは地上の世界から月が見え始めた頃。普段、おれが帰ると喜んで飛び付いてくるリヴァイの姿はそこにはなく家の中は静まり返っている
変わりのない室内、一つ違うのは床に血痕が残っているぐらいで。それを指で触れると乾きつつある赤に眉を寄せた

「やるなら完璧に、だ」

荒らした形跡がないのは流石だが血痕を残すなど、バカな連中だ
飯も作らねばならない。ならそろそろ迎えにいってやろう
目を閉ざし意識を集中させると感じる様々な人間の気配。その中でも二人と一人の弱った僅かに残る気配を見つけ瞼を上げる

「…護身術でも教えてやるか」

近くに置いてあった小型のナイフをポケットに突っ込み家を出る。相手も人拐いなら分かるだろ
おれに敵意を、殺意を向けるということがどういうことなのか。試してやるよ、この世界でお前らがどんなにちっぽけで貧弱な存在かを

「その身をもって、分からせてやる」

人のものに手を出すことが何れだけ恐ろしいかを…



(久々な感覚に吐き出すように独り嗤った)
(大丈夫、おれはまだ穢れたままだ)


back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -