もふもふもふも…(以下略)

「………」

これはいったいなんだ、目の前に映るふさふさした物体はなんなんだ
昨日いつも通り二人でベッドに入って何もすることなく普通に眠りについたはず、当たり前の毎日。だが、おれの視線の先には隣で寝息をたてているローさんの頭に着いている三角の毛のついた黒耳。猫耳そのものだ

「…ぅ、…ん」

「……」

もぞりと軽く身動ぎしその体をおれの方へと寄せるローさんにどうすることも出来ず、もふもふ好きの衝動に刈られ耳へと手を伸ばした。ピクリピクリ。触れるたびに小さく動くそれは温かくて、しっかりと繋がっていることを意味している

「すげェー」

「…何してんだ」

「あっ、ローさんおはようございます」

「ん、」

うっすらと瞼を上げ気だるげに此方を見るローさんに微笑みかけ目尻に唇を落とす。こうすることでローさんは1日機嫌がよくなる、とこの前シャチさんに言われた。それは本当か分からないが今現在満足してもらっているようで彼はフフッと嬉しそうに笑った
これが毎日の情景。耳に関して以外は
「ローさん、驚かないでくださいね」

「?」

寝起きのローさんに伝えるかどうか迷ったがこのことは知っていてもらわないとおれが困る、非常に
だから、ローさんの手をとり存在を主張している三角のふさふさとした耳に持っていくと案の定彼は大きく目を見開いた




「………」

「見事に猫のパーツが付いてますね」

ベッドに座り渡した手鏡で頭の上を確認するローさんをおれはソファに座ってじっと眺める。ピクリと動く耳にゆらりと揺れる尻尾。夢じゃない現実に目が眩む
正直、この姿を他のクルー達に見てもらいたくない。不意によぎった考えは独占欲、僅かでも足を踏み外してしまえば引きずり込まれるそんな甘美な想い。駄目だ、落ち着けおれ自分を見失うな。落ち着かせるために肺に沢山の酸素を取り込み吐いた

「ローさん、理由とか分かりますか?」

「いや。…昨日は特に変わったことはなかったはずだ」

「そうですか…」

お手上げだ。訳が分からない
余裕が出てきたのか、ローさんは耳を触り尻尾を触り本当に神経と繋がっているんだなと感心しながらじっくり調べている。こんなのもありかもしれない、ローさんを視界に捉えながら苦く笑うおれを横目に音もなくどこか楽しげに彼も笑った

「いいですね、その尻尾」

「見てるだけじゃつまんねェだろ。…触るか?」

「…………」

ゆらりゆらり。緩やかに動くそれに誘われるようにおれは彼の隣へと行き手を伸ばす
彼の意図によってするりと絡んでくるそれに自然と頬が緩む。衝動はゆっくりゆっくり和らいだと思えば時折顔を覗かせる。目眩を覚えるような甘い罠は姿を眩ませることなくそこにある。耳、尻尾…それだけなら何も思わないことはないがここまで酔いしれることはない。それらが今想い人の一部となっているからこそこんなにもいとおしく、離れられることが出来ないのだろう

「お前がこうもおれに触れてくれるなら、こういうのもたまにはいいかもな」

「そりゃぁ、………」

「フフッ」

ごろりとおれの膝に頭を乗せ横になるローさんが本物の猫に見えて。耳の着いた頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めて刷りよってくる姿に頬が緩む、まぁ仕方がない。本当に愛らしいのだから

「アルス、ねみィ」

「じゃあ寝ててもいいですよ、おれコックに食事もらってきますんで」


そろそろ腹が減った
ローさんに退いてもらおうとすると逆に力を込められて重たい。ふっと彼に視線を落とすと先程までの機嫌の良さはどこへやら怪訝そうにその眉を寄せていた

「察しろ、ばーか」

「おれにも仕事ありますし、おれだけさぼりだなんて周りの皆に申し訳ないんで…」

「……」

「すぐに終わらせて戻ってきますから」

納得いっていないと主張する眉間に軽いキスを落とすとそれが気に食わなかったのか腕が首へと回されぐっと引き寄せると荒々しく口付けられる
突然のことで驚くおれなどお構いなしに舌を這わせてくるローさんにおれも誘われるようにそれを絡ませた

「……ふ…っ、ん…」

鼻から抜けるような甘い声が耳の奥まで響く。酔いしれてしまいそうなそれにこのまま…とずれていく思考。簡単にローさんのペースに乗せられそうになり口内を堪能したあとゆっくりと唇を離した

「すぐに戻ってきますから」

「……」

「…あのー、」

ベッドから立ち上がり行こうとするも服の端を引かれて前には進めない。どうしたものか、いい案はないかと思考を巡らすもいっこうに思い付かず断念

「…すぐに」

「?」

「……っさっさと終わらせてすぐ戻ってこい。それが出来なければバラすからな」

それだけ言って再びシーツにくるまるローさんに唖然と立ち尽くす。だんだん回りだす思考、強がる口とは裏腹に垂れる尻尾に苦笑し、はいと返事を返しドアへと向かう
ドアノブを回し出ようとして思い出す

「ローさん、仕事後はずっとここにいますから。貴方が望むことを何でもしますよ」

「……当たり前だ。さっさと行け」

素直にゆらりと揺れだす尻尾。
早く済ませてここに戻ろう、そう決心して仕事場へと向かった

後で写真でもとろうかな…


(「……アルスのやつどうした?」)
(「分かんない、けどすっごく機嫌いいね」)
(「船長は部屋から一歩も出てこねェし…、何かあったなあれは」)



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