LOVE HEART 2

ふわりと浮かび上がるシャボン玉は普通のものより一際大きくて、振れても割れることのないそれに目を奪われた。こんなの、初めてみた
ついに上陸したシャボンディ諸島
久々の地面の感覚にシャチさんやベポは走り回りながら喜んでいてペンギンさんは彼らを見ながら苦笑している。おれも彼らに混じろうかと思い一歩踏み出すも腕をローさんに掴まれ身動きがとれなくなった

「何処行く気だ」

「え、ベポ達のところですけど」

「ここにいろ」

「…はい」

最近やたらとローさんはおれを離してくれない。けれどもそれは束縛なんて強いものではなくただ隣にいてほしいという恋人の甘いそれで
隠すことなく感情のままに動いてくれる彼についくすりと笑ってしまう。途端に怪訝そうにおれを見るローさんに何でもないと返して軽い口づけを贈ると険しかった顔も機嫌の良いものに変わった

「アルスのやつ、船長のご機嫌とり上手くなったな」

「…ご機嫌とりというより、ただ自分がしたいだけだろ」

おれ達を見ながら呆れたように言葉を交わすシャチさんとペンギンさんを気にすることなくローさんに笑い掛ければ彼も同じように笑ってくれた。取るに足らないと、下らないと吐き捨ててきた感情がローさんと上手く化学反応を起こして色濃く色付いていく。それが今のおれにとって心地いいもので、気づくことのできた想いに感謝した

「これから何処に行くんですか?」

「他のルーキーも調度この島にいるらしい。そいつらを見てこようと思ってる。その後で一番グローブのオークション会場に向かう」

「ならおれ、遊園地にいっても」

「バラすぞ」

「ですよねェ」

ルーキーを見ることはともかくオークション会場、それも人間オークションを見る悪趣味などおれは持ち合わせていない。それならばシャチさんやバンダナさん誘って久々の羽休めに遊んできたい。ここにあるシャボンディーパークは楽しいと聞いたことがあったから。しかし、それをローさんは許してくれるはずがなく、離れようとした瞬間刀に手が添えられたのを見て遊園地を諦めざるをえなかった。それでも、眉を下げてとじーっとローさんを見つめていると少したってから彼はため息をつきおれの頭を撫でる

「?」

「終わってからならいくらでも行ってやる」

「………」

思いもよらぬ言葉におれは顔を明るくさせるとぎゅっとローさんを抱き締めた。痛てェと小さく呟かれたが満更でもなさそうで、おれの背中に腕を回し強く抱きついてくるローさんに自然と笑みが零れてしまう。するとゴホンとわざとらしい咳払いが聞こえそちらに視線をおくるとおれ達の一部始終を見守っていたはずのペンギンさんがおれとローさんを引き剥がした

「何しやがる、ペンギン」

「このままじゃ埒が明かないだろ。これからどうするか指示ぐらいしてくれ、船長殿」

「………」

邪魔されたことで一気に機嫌を悪くしたローさんが周りでそわそわしていたクルー達に指示を送る。おれとペンギンさん、シャチさん、ベポはローさんと共に、 後の奴等は必要なものをこの島で揃えておけと。それから何事もなかったかのようにずんずん歩いていくローさんに呆気に取られていたおれ達四人は彼の跡を追いかけた

「変わり過ぎだろ船長」

「おれが邪魔したからな。今の船長には触れないことをお薦めするぞシャチ。ベポは大丈夫だと思うがな」

「ちょ、何だよそれ!!アルス、機嫌取ってこい!!」

「後でとりますから大丈夫ですよ」

ペンギンさんの言葉に焦るシャチさんを軽く流して数メートル先を歩くローさんの背中を後ろから眺める。こんなにもおれは彼の行動、感情1つに左右されてしまう。だからこそ護っていきたい、その背中を…彼の全てを
人差し指でキラリと輝るシルバーを空にかざし決意を改めた




(護っていく)
(己を犠牲にすることになっても)

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