嬉しそうに笑う君へ





「名前、名前!!」
「……」
「あっ!おい無視すんな!」

喧しい、非常に喧しい
構って欲しいオーラを全身にまとって俺にべったりくっついてこようとするシャンクス。こいつとは年が近いせいか一緒にいる時間が長い。あとバギーも
俺としては静かに本でも読んでゆっくりしたいとこだがこいつがどうもそれを許してはくれない

「俺は1人でいたいんだ、邪魔しないでくれ」
「俺はお前と一緒にいたいんだ!だからついて行く!!」

太陽のような笑顔で答えたシャンクスにこれ以上言っても意味が無いと考えシャンクスの好きなようにさせることにする。ああ、さよなら俺の愛しき読書タイム

「名前ー」

ぎゅっと抱きついてくるシャンクスの頭をポンポン叩きながらその場に立ち尽くす。これがいつもの光景、いつもと同じ日常。ぎゅうぎゅう締め付けてくる力強い腕に顔を歪めながら当の本人に聞こえないよう小さく息を吐いた

「お前達またやっているのか?」
「あっ、レイリーさん!」

呆れ顔のレイリーさんが近づいてきて俺の肩をポンと叩く。その意味を察し苦笑をこぼすと同じような顔をされお前も大変だな、なんて。労いの言葉に乾いた笑い声を出すほか無かった

「それはそうとロジャーを見なかったか?」
「ロジャー船長ならさっき甲板で寝転がってましたよ」
「そうか、ありがと。…それとシャンクス、名前をあまり困らせてやるなよ」

それだけ言うとレイリーさんは甲板へと向かった。確かにレイリーさんの言う通り困ってはいるが別段嫌というわけでは無い、むしろこうしてシャンクスと一緒にいられることは嬉しいのだ。しかし、常にいたいというわけではなく1人になりたいという時もあるわけで。対照的な考えを巡らせていると、急に静かになった赤髪の存在を思い出し視線を戻す。どこか浮かない表情を隠すように俯くシャンクスの姿に無意識に口を動かした

「?どうした」
「名前は…迷惑か?」
「?」

何が?求めている答えが分からず小首を傾げると弱々しい声でぽつりと紡いだ

「俺は…名前が好きだから一緒にいたい。けど、それで名前が困るのは嫌だ」

いつもの騒がしい彼はどこへ行ったのやら。恐る恐る顔を上げたシャンクスの表情は不安一色で。つい可笑しくて笑ってしまった。本当にこいつは俺の事大好きなんだなと、かくいう俺もシャンクスを愛しているのだと改めて自覚した

「お前のこと、本気で迷惑してたら恋人になんてなら無いだろう。…ただ、俺も1人でいたい時もあるからその時は察してくれ。あとは一緒にいるから」
「本当かっ?!」
「あぁ、本当だ」
「名前ー!!大好きだー!!」
「はいはい」

あのらしく無い顔はなんだったのか、一変していつもの調子に戻ったシャンクスを取り敢えず部屋まで引きずっていく。一眼が気になるのもあるがそれ以上にいつもの笑みとは違いはにかんだように、恥ずかしそうに笑うシャンクスを誰にも見せたく無いわけで。人知れず独身欲の強い俺の我儘。今日はゆっくり2人で過ごそうなんて考えながら廊下を歩く途中「またやってんのかお前ら」と言ったバギーを軽く蹴っておいた


(「テメェ何しやがる!」)
(「いや、何となく」)

back




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -