妊娠が発覚して名前にその事実を伝えてもうどれだけ時が経っただろうか。変わりのなかった腹はぽっこりと大きくなり子が宿っていることが目に見えてわかる体になってしまった。ここに来るまでに辛い事はいくつもあった、悪阻は勿論仕事もままならないわ一部の人間から蔑んだ視線を浴びることも。Ωの風当たりを実感し落ち込む日も多かったが名前が彼奴らがそばに居てくれた、だからこそ乗り越えて来れたのだ

「王よ、食事をお持ちしました」

侍女によって運ばれた食事に手をつける。ここ数週間、俺は仕事をしていなければまともに外へ出ていない。ジャーファル達が体に触るからと仕事は全て請け負ってくれている、嬉しいことだが心配しすぎじゃないだろうか。身の回りの世話を全て侍女にやらせたり、気分転換に廊下を歩くにもお付きをつけたり。俺が自分でやると言っても聞いちゃあくれない
気遣ってくれることは嬉しいがここまで心配されてはな。それに

「…名前は、まだ仕事か?」
「はい。名前様は只今外交の為他国へ赴いております。予定では明日にシンドリアへ帰ってこられるかと」
「そうか…」

もう随分名前と話は愚か顔を合わせてすらいない。俺がすべき仕事、特に他国とのやりとりは全て名前が行っている。彼奴はシンドリアいち頭の切れる奴だ、腕にも覚えがあるし最も信頼できる。だがそれ以前に彼奴は俺の夫だ。
忙しいのは承知の上。けれど、今は

「そばに居てほしいなんて、我儘…か」

溢れた願望は空気を震わせ消えていく。1人になった部屋で食事を最後まで食べきらず再びベッドに身体を沈める。
名前に会いたい、会いたいんだ。大きくなった腹を撫でながら名前を想いひっそりと枕を濡らした


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「ん、んぅ…」

暖かい。それに気持ちがいい。ふわりと頭を撫でられる感覚に閉じていた瞼を無理矢理こじ開けるとバツの悪そうな顔をした名前がいて。寝ぼけていた頭は瞬時に覚醒し、ベッドに腰掛けている名前に腕を絡め抱きついた。久し振りの名前に止まっていた涙が頬を伝う

「名前」
「シン、体調はどうだ?」
「大丈夫だ。それよりも、お前に会えない日々が…辛かった」

不甲斐なくも震えた声に名前は俺の想いを察してくれたのか抱きつく俺の髪を一房掬い取りキスを落とすと俺の身体を優しく離し、俺と向き合う形で隣に体を横たえた。このまま一緒にいてくれる一晩俺の隣に居てくれる。幸福で胸が満たされた

「侍女から聞いたよ。お前を1人にして…会いにこなくて悪かった」
「まったくだ。寂しさで心が押しつぶされそうになったぞ。……情けないと思うか?」
「まさか。寧ろ、そこまで俺を想ってくれることが嬉しいよ」
「ん、」

頬を両手に包まれ唇を優しく貪られる。
久々の口付けに歓喜し誘うように名前の唇を舐めれば舌が口内へと差し込まれ荒々しく俺の舌を絡みとり離さない。何度も何度も口付け合い意識さえも同化してしまいそうな感覚に陥る。これまでの空白を埋めるかのような激しい口付けに溺れた
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