07


「エレン・イェーガー、覚悟はいいか?」

「……」

「立体機動装置を操ることは兵士の最低条件だ。出来なければ開拓地に戻ってもらう……いいな?」

「はい!!」

目の前には教官、腰のベルトには適性試験の為のロープが付けられ準備は出来た
教官の後ろにはミカサやアルミンにライナー、ベルトルト。そして、俺を見る集団から離れて静かにそれでいて興味の無さそうに此方を見るロード

"感情が先走りしている"

"力むな"

目を閉じれば聞こえてくるロードからの言葉。助言なんてくれるわけないだろうと諦め半分で聞きにいった結果、アイツは面倒臭がりはしていたが出来る限りの言葉をかけてくれた。それが嬉しくて、何故だか分からないが安心している自分がいて…
アイツに、ロードに認めてもらいたい
突拍子もなく沸いて出てきた感情に従っていた

ギシギシ

不安定に浮くからだを必死に保つ。力むことなくただロープに身を任せることだけに集中した。しかし、現実は残酷なもので
幾ら願ったところで受け入れてくれることはない、そんなこと分かりきっていたこと

「降ろせ」


俺の体は見事に反転し昨日と何ら変わることのない体勢となった今待っている答えはただひとつ
もう兵士になることを、巨人を駆逐することを諦めねばならないのか。いやだ、そんなこと認めない
しかし、幾ら嘆いたところで意味のないことだと悟っている自分がいて
折角ロードから助言を聞いたのにそれを活かすことの出来ない自分に腹がたった

「ワグナー」

「はっ」

「イェーガーとベルトの装備を交換しろ」

不意に投げ掛けられた教官の指示に俯けていた顔を上げると後ろにたっていたヤツのベルトと俺のベルトを代えられる。何故ここでベルトが関係してくる?疑問を抱きながらも指示に従い、再びロープにぶら下がると不思議なことに反転することなく体はギシリと音をたてながら安定した


「これは…、一体…」

「装備の欠陥だ」

それは昨日ロードが言っていたことと同じ"装備の欠陥" 。一度失敗した原因は俺の能力が無かったわけではなく、ただの装備の問題で。だから、これは不合格じゃなく…

「適性判断は…」

「…。問題ない…、修練に励め」

合格。それは俺にも兵士として生きる資格があるということ、巨人を駆逐する為の力を身に付けることができるということ。視界に入れた4人に、いや昨日俺の言い分を否定したミカサを睨むように見詰める。俺は出来る、巨人とも戦える、お前に世話やかれる必要もねぇとアイツに伝わるように
その時見開かれたミカサの瞳が何を悟ったか分からないが、別にどうでもよかった。俺は兵士になれる、その事実を誰も否定出来ないのだから










「ロードっ…」

その日の訓練は終わり夕食の完成を待つ間の時間、アルミン達と離れ一人ロードを探す。それは適性試験に合格したことを直接俺の口から伝え礼を言いたいから。しかし、ここの敷地は広くなかなか見つけられない。
周りを見渡すと人の気配を全く感じない場所へと来ていて、そう言えばここは唯一教官に見付からない場所だとアルミンが言っていたような気がする。探すことに必死になっていて気が付かなかった

「はぁ…」

また後にしよう
昂っていた感情が徐々に降下していく中、食堂へ向かおうと踵を返そうとした

「イェーガー」

その呼び声に振り返るとそこには医学書を持ったロードがいつものような冷たい視線を俺に向けていた。ロードが俺の名を覚えてくれていた、さっき降下しかけていた感情が驚く勢いで高まっていく気がする
それが合格を報告出来る喜びではなく、ただロードに会えたからなんて恋をする乙女と同じようなものだなと他人事のように考えた

「俺を探していたようだが…、何のようだ」

怪訝そうに顔をしかめるロードにはっとし慌ててさっきまで考えていた事を言おうとするも頭が真っ白になって何をいっていいのか分からない。兎に角早くしねェとロードの機嫌を損ねてしまう。そんな俺に呆れたのかロードは小さく息を吐くと俺の目の前までやって来て少し冷たい手を俺の頭に乗せた
昨日やってくれたみたいに…

「何を慌ててるか知らねェが少しは落ち着け」

「…あぁ」

つい呆けてしまった、見惚れてしまった。
何時もは仏頂面であまり表情に出さない印象の強いロードが口角をゆるりと上げて呆れながら笑っている。それが珍しくて、新鮮で…
戻りかけていた思考もその綺麗な微笑み1つでまた失いそうになるところだった

「で、どうした?」

「っぁ、適性試験のことだけどよ」

「合格だろ。よかったな」

淡々と感情の籠っていない声で告げられ、なんて返したらいいのか分からず口はただ魚のようにパクパク動く。一緒に喜んでくれるわけがないことは分かっていたがこれはこれで寂しいものがある。そんな俺がロードの瞳にどう写ったか検討もつかないが一言言葉を紡ぐと歩いていってしまった

"お前はアイツに似ている。それ故に此処で終わるような奴ではないことなど分かっていた"

まるで意味の分からぬその言葉に、俺はなんと返事をいていいのか分からなかった。俺が似ている?アイツって誰だ?
ロードの言葉から疑問に思った単語を並べてみで生憎検討などつかないが、ただ俺の合格を信じてくれていたことだけは分かった
それだけでも嬉しい

認めてもらえるきがして…
この感情が何なのか分からない。ただ兄のようなロードに色々教えてもらおうと一人星空の下で小さく笑った



(「エレン、なんだか嬉しそうだね」)
(「まぁ、な」)
(「………」)



back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -